これまでの新幹線車両よりもさらに「最高の=Supreme」の新幹線を目指して2018年3月に登場したN700S。落成して以来、各種走行試験、8両編成に短縮しての走行試験などを経て、現在も2020年の営業運転開始を目指して試験が繰り返されている。
そんな中、一般の東海道新幹線の運転が終わった深夜に、このN700Sを使用した、時速360km速度向上試験が行われた。現在、国内の営業列車最高時速はJR東日本の東北新幹線E5系E6系の時速320kmなので、そこからさらに40kmも速い。「時速360kmでも通常運行との乗り心地をほぼ維持している」と意気込むJR東海の新幹線チームのみなさんと共に試験車両に乗っていざ未体験ゾーンへ出発だ!
今回、試験運転が行われるのは東海道新幹線の米原~京都間。この区間はカーブの多い東海道新幹線の中でも比較的直線が続くことから、かねてから高速走行試験が行なわれてきた区間だ。営業列車がまだ走る22時14分ごろ、京都方面よりN700Sがその特徴的なノーズとヘッドライトを輝かせて米原駅に入線。今回は16両のフル編成で試験される。N700Sは東海道・山陽新幹線直通車両として16両編成が基本となっているが、JR東海が積極的に取り組んでいる海外の高速鉄道事業への参入などを考慮し、12両、8両といった4両1グループ単位での編成変更も可能。現在ではアメリカテキサス州に新たに開業する高速鉄道と、すでに従来車である700系の改良型が走行している台湾新幹線への新車両投入を思案している。16両編成というのは東海道新幹線以外では定員が多すぎることがほとんどで、あらゆる条件でも対応できる「標準車両」を目指したN700Sでは、投入される路線の輸送人口などに応じてフレキシブルに編成長を調整できる基本設計を採った。
話題を今夜の試験に戻そう。乗車までの時間、ホーム上からN700Sを観察してみる。16両すべての窓のシェードが降ろされた光景はまさしく試験列車そのもので、独特のオーラが漂う。電気を集電するパンタグラフにも投光がなされ、走行中の様子をカメラで監視できるようになっている。ホームから運転席をのぞいてみるとカメラが複数台設置され、これから行われるテストの緊張感が伝わってきた。なお、今回の運転士は試験車両の運転を専門とする選抜メンバーだ。