気温がどんどん上昇して、エアコンをガンガン効かせなければ過ごせないほど暑くなるこれからの時期。クルマのエンジンにとっては、オーバーヒートの恐れのある過酷な状況となる。
そこで重要となってくるのが、過熱したエンジンの冷却の役割を担う冷却水(クーラント)。今回は、そんな冷却水について解説したい。
冷却水とは?
冷却水は、ラジエーター液やクーラント(ロングライフクーラント:LLC)とも呼ばれ、循環させることによってエンジンまわりの熱を奪って、ラジエーターで放出する役割を果たしている。
その成分は、防錆効果や凍結防止性能(※不凍液と呼ばれることも)、消泡性に優れた配合となっており、通常の水道水とは全く異なるもの。
したがって、冷却水の代わりに水道水やミネラルウォータを使用してしまうと、エンジン内部にサビが発生したり、氷点下の場所では凍った水が膨張して破損につながるため、基本的に使用はNGだ。
ただし、出先などでどうしてもクーラントが手に入らない状況であれば、応急処置的に水道水を使用することも可能。ただし、その後でクーラントと入れ替える作業をする必要がある。
また、クーラントの交換時期は、一般的に約2年といわれていおり、クルマの構造的に漏れが生じていない限り、大幅に減ることはない。ただ、微量ながら蒸発しているため、定期的な点検と補充が必要となる。
特にスポーツタイプのクルマなどでは、その傾向が強いため、こまめなメンテナンスが欠かせない。自分のクルマの減り具合などを考えて、補充用のクーラントを用意しておくのもいいだろう。
クーラントの種類
そんな一般的に販売されているクーラントには、原液タイプとそのまま使える希釈タイプがある。原液タイプは、コスパ的には有利なのでクーラントをすべて交換する場合はいいのだが、その都度、水で希釈する必要があるため手間がかかる。継ぎ足しする補充であれば、希釈されたタイプが便利かも知れない。
さらに最近では、交換サイクルが2年のもの対し、4年間交換不要の長寿命タイプ「スーパーLLC」も増えてきた。車検ごとに交換したいだとか、自分のサイクルに合った選び方をすればいい。
そして、見た目で違うのがクーラント液の色。基本的には、赤系(赤、ピンク)と青系(青、緑)の2種類があるのだが、中身はほぼ同じ。これは、赤系がトヨタ系列、青系は、その他の自動車会社などと、メーカーごとに採用した色の違いなだけ。
ただ、この液に色付けされていることによって、クルマから漏れている液がクーラントだと判別しやすくなり、さらに漏れの発生個所を特定するのに役立っているのだ。また、クーラント独特の綿菓子のような甘い匂いが、漏れの早期発見にひと役買っている。(※ただし、有毒なので、決して口に入れてはいけない。)
ちなみに、クーラント液の色には、このほかにも無色透明なものと黄色のものがある。無色透明なものは、輸入車の一部などでも採用されているが、黄色を含めてレース専用の場合が多い。ただし、レース専用のものは凍結防止性能が無いため、一般的なクルマには不向きだ。
クーラントの補充の仕方
さて、クーラントの量が不足していないか確認するには、ボンネットを開けたエンジンルームにあるリザーバータンクを見る必要がある。このリザーバータンクには、MINとMAX(車種によってはLOWとFULLもしくはLOWERとUPPER)などという目盛りがついているので、その範囲に液面があれば問題ない。
もし、それよりも少ない場合は、クーラントを補充する必要があるのだが、ここで絶対に注意しなければいけない点がある。それは、エンジンがしっかり冷めた状態で行うこと。そうしないと、熱したクーラントの液が蒸気とともに吹き出して、大変危険だ。
実際、私の身近な人物にも、充分冷えたと思ったラジエーターのキャップにタオルをかけて開けたのにもかかわらず、吹き出した蒸気で上半身に大やけどを負い、入院してしまったことがある。車内にある水温計なども確認しながら、慎重に作業をして欲しい。
なお、国産車のリザーバータンクによっては、タンク内に圧のかからないタイプも多いが、油断は禁物。また、クーラントの量を確認する際も、冷えてるときとそうでないときでは、かなりの違いが出ることもあるので、注意したい。
そして、作業的には、こぼさないように漏斗(じょうご)などを使って、リザーバータンクの目盛りの範囲内の量まで補充してやるだけ。市販のクーラントには、注ぎやすいように、容器にノズルのついたものもあるので、そういうタイプを選ぶと便利だ。
ちなみに、一般的なクルマは、リザーバータンクに補充するだけなのだが、中には、エンジン側のラジエーターキャップも同時に外して作業を行う必要があるなど、車種によって異なることもあるので、事前に取扱説明書を確認しておくといいだろう。
クーラントの交換はどうする?
クーラントの補充が、こんなに簡単ならば、入れ替えも楽なのでは?と思うかも知れないが、実は意外とそのハードルは高い。細いホース内に液を通すための専用の道具などが必要だったり、気泡でエンジンにダメージを与えないようにエアー抜きが大変だったりと時間もかかってしまう。
また、排出したクーラントは有毒物質を含むため、産業廃棄物として適切に処理しなければいけないなど、総合的に考えると整備工場などに依頼したほうが安心で確実だろう。
(プロフィール)
文・撮影/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)
クルマは走らせてナンボ!をモットーに、どんな仕事にも愛車で駆けまわる日々。クルマのほかにもグルメやファッション情報、また小学館Men’s Beautyでは、男性に向けた美容・健康法、化粧品情報なども発信。