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進学資金が用意できない家庭にとって、頼れる制度の1つが「奨学金」だ。一方、奨学金の多くは返済が必須となるため、その「利率」は気になるところだろう。
実際、奨学金の利率はどれくらいで、最終的にいくら返さなくてはならないのか。この記事では、最もメジャーな奨学金制度である「日本学生支援機構」の貸与奨学金の利率と、その返済について解説していく。
奨学金の利率とは?貸与型(第二種)の利息の仕組み
奨学金は大きく分けて、返済不要な「給付型」と返済が必須の「貸与型」がある。貸与型を利用した場合は、ただ借りたお金を返すだけでなく、「利息」を含めて返済することになる。この利息を決めるのが奨学金の「利率」だ。
奨学金の利率算定方法「利率固定方式」「利率見直し方式」とは?
では、奨学金の利率は、どのように決められているのだろうか。日本学生支援機構では、第二種奨学金の利率算定方法に「利率固定方式」または「利率見直し方式」の2つを採用している。
奨学金の貸与終了時(返済開始時)に、借りる側がどちらの算定方法にするかを選ぶ仕組みだ。
・奨学金の利率算定方法1:利率固定方式
貸与終了時に決定した利率を返還完了まで適用。将来、市場金利が変動した場合も利率は変わらない。利率見直し方式よりも金利は高め。
・奨学金の利率算定方法2:利率見直し方式
貸与終了時に決定した利率を、おおむね5年ごとに見直し。将来、市場金利が変動した場合は、それに伴って利率も変動する。利率固定方式よりも金利は低め。
【参考】第二種奨学金の利率の算定方法の選択 | JASSO(日本学生支援機構)
奨学金の利率は年3%が上限、在学中は無利息
これらの計算式を見ても、実際の返済はどれくらいなのか、ピンと来ない人も多いだろう。そこで、ここからは実際の返済額について見ていこう。
利率固定方式や利率見直し方式の違いに関わらず、利率は年3%が上限となっている。また、在学中および返還期限猶予中は無利息となる。
奨学金の返済金額の平均は? いくら返すかのシミュレーションも可能
奨学金の返済額の平均は、借りる額によっても異なるが、毎月5万円の貸与型奨学金を4年間(48か月間)利用したとして、貸与総額は240万円だ。この利率が0.23%だとして、月賦返済を選択していたとすると、返済の回数は180回、実に15年間を要することになる。実際に借りたお金プラス、4万4486円を返すことになるのだ。
こういった計算は、日本学生支援機構の「奨学金貸与・返還シミュレーション」を活用するとわかりやすい。実際に自分が借りた数字などを当てはめてみよう。
【参考】奨学金貸与・返還シミュレーション(日本学生支援機構)
奨学金の利率を計算するには?便利なやり方
利率固定方式と利率見直し方式で、返済額の計算は変わってくる。
「利率固定方式」は貸与が終了した月の利率が採用され、その利率は奨学金の返済が終わるまで変化しない。一方、「利率見直し方式」では、およそ5年ごとに利率の見直しが行われ、市場金利次第で利率が上がったり下がったりする。
その細かな利率や貸与総額の計算方法は、前述した貸与・変換シミュレーションで細かく設定できるため、そちらを活用してほしい。
【参考】第二種奨学金の貸与利率 | JASSO(日本学生支援機構)
奨学金の利率や利息がおかしい時はどうすればいい?
奨学金の利子は、前述したように借りた年度や月によって決まっている。現在の返済額とシミュレーションの数字が明らかにおかしい時は、一度、問い合わせてみるといいだろう。
奨学金の利率見直し方式により変動している可能性
奨学金の貸与終了時に「利率見直し方式」を選択した場合、市場金利の変動に伴って利率が見直される場合がある。
利率の見直しはおおむね5年が目安。利率がおかしいと感じたら、まずは利息の算定方法に「利率見直し方式」を選択していないか確認しよう。
【参考】第二種奨学金の利率の算定方法の選択 | JASSO(日本学生支援機構)
奨学金の利率を変更したい! 手続きは可能?
奨学金の利率を算定する方式は、変えることができるのだろうか? 結論から言うと、貸与期間が終了する年度の一定期間までは変更が可能だ。しかし、振込保留中や貸与期間が終了している場合は変更できない。
【参考】利率の算定方法の変更 | JASSO(日本学生支援機構)
奨学金の返済金額は変更できる? 繰上返還とは?
奨学金の返済金額を変更する方法の一つに、「繰上返還」がある。
文字通り奨学金を予定よりも早く返す仕組みで、その分の利息がカットされて、支払い回数も減る。この申し込みは、日本学生支援機構のインターネットサービス「スカラネット・パーソナル」から可能だ。
【参考】繰上返還について | JASSO(日本学生支援機構)
奨学金は繰り上げ返済したほうが得?覚えておきたい日本学生支援機構の申請手続き
日本学生支援機構(JASSO)が提供する貸与型奨学金には「第一種」と「第二種」の二種類がある。無利息の「第一種奨学金」とは異なり、支払回数が多く、利息分も支払わ...
奨学金の利率は他のローンよりも低い? 日本学生支援機構(JASSO)を基準に比較
日本学生支援機構では、金利の上限は3%と定められており、返還誓約書にもMAXの総返済額が記されている。国や各銀行の教育ローンと見比べてみても、日本学生支援機構の奨学金は、金利がかなり低く設定されていると言えるだろう。
無利息の奨学金がある? 利息がつかない「第一種」
最初に奨学金には「給付型」「貸与型」の2種類があることを紹介したが、さらに「貸与型」の中にも、利息がつかない「第一種」と利息がつく「第二種」とがある。
ここまで解説してきた利息は「貸与型」の「第二種」を対象としている。「第一種」は無利息であることから、非常に人気が高いのだが、選ばれるのは非常に困難だ。
まず、第一種の対象となるには、「成績が優秀」であることが求められる。そのうえで、修学が著しく困難な人が選ばれる仕組みになっている。「利息を払いたくないから」という動機では、選ばれないのが実情だ。
この第一種も、返還方式は定額返還方式と所得連動返還方式の2つから選択できる。第一種の貸与を目指す人は、こちらも参考にしよう。
【参考】第一種奨学金(無利子で借りる) | JASSO(日本学生支援機構)
貸与奨学金(第二種)を借りる時は返済金額までシミュレーションしよう
奨学金は「給付型」でない限りは、必ず返済をしなければいけない「借金」だ。
そして、ほとんどの人が利用する「第二種」の場合、利率を含めて返済金額を確認し、後々になって困ることがないように返済計画を立てておきたい。この記事を参考に、現実的な奨学金のプランを選び、返済で苦しまないようにしよう。
奨学金の返済額はどうやって決まる?覚えておきたい日本学生支援機構(JASSO)の貸与額データと返済利率の算定方法
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文/ねこリセット