医師がすすめるカラダにイイこと!教えてDr倉田
2019年5月24日に『空母いぶき』(小学館ビッグコミックス連載中)が実写映画化されました。
原作コミック内で、中国の病院船『岱山島(ダイシャンダオ)』の陰に隠れた艦船を自衛隊が攻撃出来ない場面が登場(詳細は皆さんでご確認下さい)しますが、今回は「知られざる病院船」についてご紹介します。
「病院船」とは何か?
世界初の「病院船」は紀元前431年古代ギリシャ帝国で生まれたようですが、ジュネーヴ条約に基づき、外観上の規定や武力行為に加わらないなどの制約のもと、戦時下でも攻撃を受けないことを保証された船です。
日本初の「病院船」は日清戦争の『神戸丸』です。デートスポットで知られる横浜・山下公園の『氷川丸』も、太平洋戦争中に「病院船」として活躍しました。
現代の「病院船」を陸の病院と比べると、東京都内にベッド数1000床クラスの病院は7つほどしかないことから、規模や大きさを想像してみて下さい。
世界の主な病院船をご紹介します。
『空母いぶき』に登場した「岱山島」はとても新しいですね。
超巨大病院船「マーシー」って何?
2018年6月アメリカ海軍『マーシー』が東京大井ふ頭に入港し、政府や医療関係者と懇談が行われた際の内閣府報告書やアメリカ海軍HPなども参考にその姿に迫ります。
船の長さは横浜ランドマークタワーとほぼ同じ272mで、かなり巨大ですね。
『マーシー』は1976年建造の石油タンカー改造船で、母港カリフォルニア州サンディエゴで主に太平洋側を担当(コンフォートは母港メリーランド州ボルティモアで大西洋側を担当)、2035年まで運用される予定です。
「船頭多くして船山に上る」ことが無いよう、ミッションコマンダー(海軍軍人)の指揮下に医療面と航行面の各責任者(病院長:医師、船長)が配置されます。
戦闘や人道支援など任務が発生すると「乗組員36人(通常)→90人、医療従事者59人(通常)→350~1215人」と人員が増えます。医療従事者を含め、基本的に軍人や元軍人で構成されています。
集中治療室(ICU)88床、脳外科から産婦人科まで幅広い治療が行えます。一般病室は簡素な跳ね上げ式2段ベッドで、寝台列車に似ています。
レントゲンよりも細かい病変を発見できる「CT(コンピュータ断層撮影装置)」が1台あり、総合病院並みの設備です。
手術室は、揺れが少ないように船体中央に配置されています。
さらに最先端ロボット支援下手術システム『da Vinci(ダ・ヴィンチ)』を船内に(試験的に)搭載し「スリランカで胆石除去手術、ベトナムで婦人科手術」を実際に行いました。
『ダ・ヴィンチ』は、ロボットアームの先端に3Dカメラや電気メスなどの器具が付けられ、執刀医は画像を見ながら手元のコントローラーで手術をします。アメリカ本国から遠隔治療が行えること、お腹などを開ける手術に比べ患者の身体への負担が少ないことから、日本でも注目されている技術です。
陸上と同じ医療技術や機器を船上に取り込み戦闘などに対応すること、諸外国への医療(人道)支援を通じ、アメリカの高い医療技術を周知することも「病院船」の役割と位置付けられています。