ブロックチェーンを使って価値を記録したものを「暗号資産」と呼びます。店舗で暗号資産を受け取ってもらえるのであれば、現金やポイント、電子マネーと同じようにお金として使うことができます。これら4つを改めて整理してみましょう。
お金(通貨)の種類
これらのお金は、支払を行なうときに利用できるものをなんとなく利用していると思います。どんな支払方法にせよ受け取るお店では、最終的に法定通貨(現金)に変えることができています。
法定通貨、暗号資産、電子マネー、ポイントは何が違うのか?
どんな支払方法にせよ受け取るお店では、最終的に法定通貨(現金)に変えることができます。ところで、これら4つの違いを正しく理解できているでしょうか。暗号資産は円やドルを代替する切り札の様なもの。買い物に使えるポイントを発行する企業は、顧客の囲い込みと再来店を期待している。という風に理解している人も多いでしょう。
ビジネスシーンではそんな理解だけでは足りません。金融ビジネスに触れるときにはこれら4つの違いをしっかり理解しておく必要があります。
(1)法定通貨
いわゆる現金です。国が発行し、流通量の管理を行っています。日本では日本銀行(通称:日銀)が発行・管理役です。我々がモノの価値を判断するときの尺度としても使われます。 現金そのものに価値はなく、国が価値を保証してくれているともいえます。国の信頼が無くなってしまうと、価値が無くなってしまうリスクがあります。例えばベネズエラでは法定通貨の価値が下落して、ハイパーインフレが起こり1ヶ月に50%以上の物価上昇が起こりました。
また法定通貨は形ある硬貨や紙幣でやり取りするのが基本ですが、インターネットバンキングを使った銀行の振込サービスを利用すれば、データだけでやり取りすることが可能です。
(2)暗号資産
ブロックチェーン技術を使って実現されているお金です。ブロックチェーンのネットワークに参加している人同士が、それぞれコンピューターの計算処理能力を出し合って、発行・管理を行なっています。暗号資産そのものの発行・管理に公的機関が関わっていないので、「自由な通貨」という表現がされることがあります。暗号資産同士を交換したり、法定通貨と暗号資産を交換したりすることができますが、日本で法定通貨と暗号資産とを交換するビジネスを行なう場合は、金融庁に対して登録が必要です。
(3)電子マネー
企業が発行する独自のお金です。対応する店舗でのみ支払に利用できます。また払い戻しを行なう時以外は原則現金化できないので、自由に電子マネーと法定通貨とを交換することはできません。
資金決済法という法律で規制されていて、法の中では「前払式支払手段」と呼ばれています。「自家型」と「第三者型」に分かれていて、発行するには、金融庁へ発行としての届出・登録が必要です。
以下の3つの要件を満たすと前払式支払手段として該当します。
1)価値の保存:金額等の財産的可否が記載記録されている
2)対価性 :対価を得て(お金を払って)発行されている
3)権利行使 :代金の支払いなどに利用できる
この中で1)の価値の保存は少しわかり辛いのですが、発行される電子マネーに「1000円」などという風に、いくら分の電子マネーが利用できるか記録されているものが該当します。ちなみに「モバイルSuica」などは、ICカードに価値が記録されていますが、利用できる金額の情報が記録されているので、「価値の保存」に該当します。
(4)ポイント
電子マネーに似ていますが、前払式支払手段に該当しないものが「ポイント」であると理解するとわかりやすいです。原則として企業は自由にポイントを発行できます。ポイントは現金で自由に購入することができず、支払った代金の一部をポイントとして還元してもらえるのが主な使い方です。
まとめ
法定通貨、暗号資産、電子マネー、ポイントの4つの違いが理解できましたでしょうか。
・暗号資産は法定通貨に近い電子マネーのようなものだが暗号資産は法定通貨との交換ができるが、電子マネーは換金できない
・ポイントはお金で買うことができない
という風な違いがあります。
もし電子マネーやポイントがブロックチェーンで実現できるようになったとき、現状の法規制では、それが暗号資産と認識されれば、法定通貨との交換ができます。電子マネーやポイントとして認識されれば法規制上では換金できませんが、仕組み上は法定通貨と交換することができてしまいます。このような歪みを解消するような法規制が整備されなければなりません。
取材・文/久我吉史
現役の金融ビジネスパーソンでもある金融ライター。ネット証券やネット銀行などを渡り歩き、ITから法人営業まで何でもこなす。最近は金融ビジネスをコーポレート(法務・会計)目線で作り上げるような毎日を送っている。