■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所
Fマウントのニッコールレンズに大三元レンズと呼ばれる交換レンズが存在する。14-24mm f/2.8、24-70mm f/2.8、70-200mm f/2.8の3本で、開放絞り値F2.8の通しで、3本で超広角14mmから望遠200mmまでをカバーできるズームレンズである。プロなら最低限揃えたい交換レンズで、とりあえずこの3本があれば仕事ができる頼りになるレンズである。高性能である反面、高価、重い、かさばるの三重苦を背負ったレンズでもある。ハイアマチュアなら、いつかは3本揃えたいと思うズームレンズである。
ZマウントからもF2.8通しの『NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S』が登場した。希望小売価格は30万5500円と『Z6』のボディよりも高価である。重さは約805gと重量級。フィルター径はφ82mmで『NIKKOR Z 14-30mm f/4 S』と共通だ。最大径は約89mm、長さは126mmである。Fマウントの大三元レンズは重さ約1070g、最大径約88mm、長さ154.5mmなので、確かに小型軽量化を果たしている。
ボディに付けてみると、確かに存在感と高級感がある。鏡胴の付け根の部分は金属製でカッチリした剛性感があり、コントロールリングに加えて独立したフォーカスリングも装備。さらにNIKKORレンズ初の液晶表示パネルを装備している。最短撮影距離はズーム全域で38cm。Fn1/2ボタンと同じ機能を割り当てられるL-Fnボタンも装備してレンズ側で操作できることが増えている。
定価30万円超えの高級レンズとしての貫禄は充分、バランスはいいが、ズシリと重さを感じるレンズだ。
被写界深度も分かる表示パネルを搭載!
初搭載された表示パネルの機能について詳しく触れておこう。まず、絞り値を表示できる。切り換えて、焦点距離。これは中途半端な数値も表示可能だ。そして、撮影距離。フォーカスモードの切り替え時にはAFとMFも表示される。距離表示の時に手前にバーが現れるが、この長さでピントの合う範囲が分かる。これが被写界深度表示である。NIKKOR Fマウントレンズは絞り値の数字が着色されており、距離指標を中心に左右対称の縦線が入っていた。選択した絞り値と同じ色の縦線の範囲が被写界深度を現し、その範囲はピントが合うことが撮影前に確認できる仕組みだった。ズームレンズはこの縦線が曲線を描いてデザイン的にも美しかった。この機能をZマウントレンズに復活させたのが表示パネルなのだ。
まあ、EVFを見ればどのぐらいの範囲でピントが合っているかは確認できるが、撮る前に分かるのが大事。この機能を使って、絞りを決めてMFでピントの位置を合わせておけば、AFを使わずに狙った距離にピントの合ったスナップが撮れる。または鉄道写真の置きピンを決めるときにも便利だと思う。
表示パネルの切り替えはレンズの「DISP」ボタンを押しておこなう。絞り値を表示中。
焦点距離を表示。ズームレンズのテスト撮影には役立つが、一般的な用途は謎だ。
撮影距離と被写界深度を表示。「DISP」でメートルとフィートの切り替え、また表示の明るさも調整できる。
Fマウントレンズにあった被写界深度の指標。80mmでF8なら7〜15mにピントが合うと一目で分かる。
こちらは絞りに合わせて横棒の指標が伸び縮みする方式。シンプルで視認性も高い。
同じ焦点距離で絞り込むとこのようにピントの合う範囲が広くなる。