
乳児の就寝中の窒息死を防ぐ方法は?
乳児の死亡事故は痛ましいものだが、安全対策をしっかり行えば防止できる事例も多い。
疫学者で米DB Consulting Group社のAlexa Erck Lambert氏らによる研究で、乳児の就寝中の窒息死の多くは、「仰向けでなくうつ伏せや横向きに寝かせている」「大人用のベッドで寝かせている」ことが原因であることが明らかになった。
同氏は「窒息死は乳児の突然死のごく一部ではあるが、きちんと対策することでその多くは防げることを知ってほしい」と呼び掛けている。研究の詳細は「Pediatrics」5月1日号に掲載された。
就寝中の乳児の窒息や首絞まりによる死亡事故は、全体では発生率は低いものの、米国では増加傾向にある。
Erck Lambert氏らによると、こうした死亡事例の報告は1999年の6件に対し、2015年には23件へと増加した。このような増加は、死亡原因の定義が明確化されたことによると考えられるが、「発生件数は、実際にはもっと多い可能性がある」と同氏らは指摘している。
この研究は、米国の乳幼児突然死症候群(SUID)のデータベースを用いて、2011~2014年に発生した1,800件以上の乳児死亡例について分析したもの。SUID全体の14%(250人)が窒息死であった。
分析の結果、窒息死の原因は「柔らかい寝具」(69%)が最も多かった。柔らかい寝具の上で窒息死した事例のほとんど(92%)で、乳児は仰向けではなく、横向きかうつ伏せに寝ており、ほぼ半数は大人用のベッドで寝ていた。窒息の原因となった寝具には枕や毛布、クッションなどが挙げられた。
さらに、窒息死の原因には、「添い寝をした人の身体の一部で圧迫される」(19%)、「マットレスと壁などに挟まれる」(12%)が続いた。添い寝に伴う窒息死の多くは親によるものであったが、きょうだいの事例も22%みられた。
マットレスと何かの間に挟まれた事例では、半数は壁との間に、約4分の1はベッドフレーム(このうち4分の3が大人用ベッド)との間に挟まれて死亡していた。
この研究には関与していない米ノーザン・ウェストチェスター病院小児科部長のMaryann Buetti-Sgouros氏は「この研究結果には驚かなかった」としながらも、「これまで起こった乳児の窒息死は、ほとんどが防止できるものだった」と強調している。
Buetti-Sgouros氏によると、親の中には、子どもを世話するのに添い寝が良いと考えていたり、寝返りができるようになったため、うつぶせに寝かせても大丈夫だと考えたりする人もいる。
しかし、窒息死した乳児がうつ伏せで寝ていた割合は、生後0~4カ月では90%弱、生後5~11カ月では70%弱に上っていた。このことからも、同氏は「添い寝やうつ伏せ寝にリスクに見合うだけの価値はない」と話している。
そこで、Buetti-Sgouros氏は、乳児を仰向けに寝かせることを推奨する米国小児科学会(AAP)のガイドラインを守るようにと助言している。
同ガイドラインでは、生後12カ月までは親と同室(ただし別々のベッド)で寝かせることを勧めている。
また、米疾病対策センター(CDC)は、乳児は硬い寝具の上で寝かせ、寝ている乳児の周りには枕やベッドガード、毛布、ぬいぐるみなどの玩具を置かないことを推奨している。
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://pediatrics.aappublications.org/content/143/5/e20183408
構成/編集部