午後の部のチャンスに賭ける
午後の部については、口輪の交換に時間を要するとアナウンスが入り、13時半から「14時以降」への延期となった。風が吹いてくれることを祈りつつ、ひたすら待つ。
時計が14時を回り、再チャレンジが始まった。風は少し吹いている。今回は、頭を少し持ち上げた段階でそれ以上は引き揚げず、慎重に風向きを見定めて、口から十分な風を取り込むように、クレーンの先端が向きを微調整している。地上のスタッフが何人も集まって、それをアシストしているようだ。ある種の『プロジェクトX』の実況を見ている気持ちになり、心の中で応援する。
風が少し強まって、チャンス到来とばかりに、クレーンが「ジャンボこいのぼり」を引き揚げた。午前の部と同様、垂直にはなった。ここからが本当の勝負。あともう少し、風が吹いてくれれば。
会場にいた見学者全員の願いに応えるかのように、風が強まりはじめ、「ジャンボこいのぼり」は少しずつ横になり始めた。
そして、ついに「ジャンボこいのぼり」は宙を泳ぎ始めた。河川敷の土手周辺にいた数千人の人たちから、ため息ともつかぬ感嘆の声が漏れ出た。
本当の巨大さを実感できるのは、まさにこの時。写真では、その大きさは到底伝えきれない。数分間の出来事であったが、3時間近く待った甲斐はあった。
もし「ジャンボこいのぼり」の雄姿をまだ見たことがないのなら、来年のゴールデンウイークは、ここを訪れることを大いにすすめたい。もちろん、無風のリスクヘッジを考えて、午前の部から参加しよう。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)