不必要な電子制御は一切なし! ライダーが走りをシンプルに楽しめる
大排気量だとこうはいかない。スロットルを開ける際にはいつもエンジン様のご機嫌を伺うような緊張感がある。「だからトラクションコントロールなどの電子制御でパワーを抑え……」と装備盛りだくさんになっていくのだが、そうこうするうちに大艦巨砲というか満艦飾というか、豪華絢爛ではあるものの、バイクらしいシンプルさがどんどん損なわれる気もする。
その点、スクランブラーSixty2はABSこそ装備されているが、その他のいわゆる電子制御は潔くナシ。プレーンな走りが心地よい。「オフロードに持ち込めば気持ちよくリアを流して遊べるかもしれないなぁ」と、想像……はしない。やはり183kgの車重と、89万9000円という価格に足踏みしてしまう。
リアサスペンションはカヤバ製シングルショックを採用。スイングアームに直付けされ、車体の左側に搭載されている。プリロード調整機構付き
320mmディスクと組み合わされるフロントブレーキキャリパーはブレンボ製2ピストン。前後ブレーキともABSを標準装備する
正立式フロントフォークはショーワ製φ41mm。ホイールはフロント18インチ、リヤ17インチで、いずれもアルミ製10本スポークタイプ
それに、スクランブラーSixty2はカッコ良すぎるのだ。オフロードを走るにはスタイリッシュすぎる。このバイクが林道でガチャガチャになり、スッ転がる光景はとてもではないが見たくない。「スクランブラー」という車名に惑わされることなく、オンロードをスマートに駆けていた方が幸せだ。
ちなみに車名の後半、「Sixty2」は、ドゥカティがアメリカで初代スクランブラーの販売を開始した1962年に由来する。ただし、当時のドゥカティ・スクランブラーは250cc単気筒エンジンが最初。もし現代版Sixty2も250cc単気筒エンジンで登場していたら、日本の林道にもズンズンと入っていける「リアルスクランブラー for Japan」だったかもしれないのになぁ、と思うと、ちょっと残念ではある。
取材・文/高橋剛(たかはし ごう)
4輪レース専門誌編集部、広告代理店勤務などを経て、2000年よりフリーライターに。バイク専門誌や釣り雑誌を中心に活動している。好奇心の範囲はバイク、クルマ、釣り、家電、アウトドア、動物など幅広すぎて収拾がつかない日々
撮影/長谷川徹(はせがわ とおる)
広告代理店勤務のカメラマンとして5年間活動し、フリーランスに。雑誌、WEB、カタログなど多彩な媒体で活躍。二輪、四輪レースを始め、バイク、クルマ、人物、ブツとジャンルを問わずキレのよい写真を提供し続けている