本来はオンロードもオフロードも爽快に走れる軽快さがウリだったスクランブラーというカテゴリーも、今やどんどん肥大化している。1000cc越え、200kg越え、200万円越えという大型志向、高級志向が進行し、もはやオフロードに気軽に分け入るといったシロモノではない。
そういった「大型スクランブラー」でオフロードを少々走ったことがあるが、デカイ、重い、(コケたら)高いという三拍子で極めてタイトな緊張感があり、「ああ、これはスタイルを楽しむべきもので、ホントにオフロードを走っちゃいけないんだな」と思ったものだ。
そこへきて、このドゥカティ・スクランブラーSixty2である。L型2気筒エンジンの排気量は399cc。中免(普通自動二輪免許)で乗れるドゥカティ……ではあるが、兄貴分である800ccバージョンの流れを汲み、体躯はなかなか堂々としている。スペックを眺めても、車重は183kg。並列2気筒のホンダ400Xが196kgだと思えば軽いと言えなくもないが、雄大な大陸の草原ならまだしも、日本のタイトな林道に積極的に入って行く気にはならない。
いかにもバイクらしい丸型ヘッドライト。LEDリングライトに囲まれ、モダンな印象だ
コンパクトでシンプルな丸型メーターパネル。中央部に速度が示され、タコメーターは外周下半分にバーグラフ表示
実際、押し引きをしてみると見た目以上にズッシリとした手応えで、「オッ……」と身構える。細かい点だがハンドルの切れ角が少なく、取り回しで小回りが利かずに「オッ……」と思うこともあった。
アップライトなハンドルポジションは快適。ただし意外にも切れ角が少なめなので、取り回しにはやや気を遣う
いざ走り出すと、オンロードバイクとしての出来栄えは秀逸だ。ドゥカティに限らず大排気量V型2気筒エンジンのドッカンドッカンと襲いかかってくるようなトルク感に苦手意識があるが、スクランブラーSixty2の399cc・40psエンジンは必要以上の押し出しがなく、好感が持てる。
多少は2気筒エンジンらしいドコドコ感はあるが、全般的にはスムーズと言っていい。大排気量ビッグパワーに慣れたユーザーは「軽やかだけど物足りない」と感じるかもしれないが、一般的には十分なパワー。先ほど引き合いに出したホンダ400Xも46psと大差ないし、交通の流れをリードするにも不足はない。
それよりも、どんなに高回転域まで引っ張ったところで「そこそこ」なところが非常にイイ。股の下で唸りを上げる399ccL型2気筒エンジンに、「オッ、頑張ってるな!」と思えるのだ。回転上昇フィールは意外にもシャープだが、それすらも心にゆとりを持って楽しむことができる。
空冷399ccL型2気筒エンジンの最高出力は40ps/8750rpm。ドゥカティのお家芸でもあるデスモドロミック機構(吸排気バルブをカムとロッカーアームで強制開閉する仕組み)を搭載