「路線バスのキャッシュレス化」を促進
路線バスで現金払いをする人は、もはや少数派になってしまった。これは全国どの会社のバスでも同様の現象であるが、静岡市の場合はローカル電子決済サービスが「路線バスのキャッシュレス化」を推し進めた経緯がある。
LuLuCaカードには数種類存在する。クレジットカード一体型の『LuLuCaプラス』と『LuLuCaパレッタ』、そして電子マネーとポイントカードのみの『LuLuCaパサール』。ここではクレカ機能のないLuLuCaパサールを重点的に取り上げたい。
LuLuCaパサールの入会方法は、専ら店頭での申し込みである。静岡市中心街にある商業施設『新静岡セノバ』の5FにLuLuCaカードの入会受付カウンターがあり、カードはそこで即日発行される。入会金は500円だが、これはあくまでもデポジット。カードを返納した場合は入会金も返ってくる仕組みだ。
LuLuCaパサールに入金する際は、専用のチャージ機を利用する。オンラインチャージは今のところ受け付けていない。Suicaのようなスマホとの紐付け機能もない。
だが、しずてつジャストラインを日々利用する静岡市民にとっては、それでもあまり不便を感じない。というのも、しずてつジャストラインの路線はいずれも静岡中心街を経由するルートに設定されているからだ。帰宅の途中で新静岡セノバに寄り、ついでにLuLuCaカードへチャージするという生活リズムが形成されている。
MaaSとLuLuCa
また、LuLuCaカード会員は市内のサービス実証実験に参加できるLuLuCaモニターになることも可能。
今年2月、静岡市内でMaaSの実証実験が行われた。この時はAIナビシステムを使った相乗りタクシーの運行に限定したものだったが、相乗りタクシーそのものの法整備がされていないため料金を取るわけにはいかない。そこで、LuLuCaモニターを集めて無料で相乗りタクシーを運行したのだ。
このMaaS実証実験は、静岡市が後援しているものでもある。4月に3期目の再選を果たした田辺信宏市長は、自身のマニフェストにMaaSの導入について記載した。これによれば、MaaSの実用化により市内どこからでも60分以内にJRの駅に行ける都市環境を構築するという。
だが、MaaSの普及は電子決済の普及と同義でもある。新しい概念の公共交通機関の登場に、LuLuCaカードはどのような役割を果たすのか。
「地方限定の電子決済サービス」が、その真価を発揮しようとしている。
取材・文/澤田真一