本来のメキシコ料理は、もっと地方色の強い多様な料理で、エリアによって味も色彩もまったく違うと言います。特に最近注目されているのが、モーレ(ワカモレのモレ。ソースの意)の故郷・オアハカの料理です。オアハカ州は昔から美食の地として知られていましたが、2000年、若き天才料理人エンリケ・オルベラ(1976年生まれ)がメキシコ・シティにモダン・メキシコ料理店『プジョル』を開き、その店で、オアハカの料理を研究した斬新なモーレを出し始めたことで、俄然注目度が高まりました。
その後『プジョル』は、「世界のベストレストラン50」でどんどん順位を上げ、昨年は13位。2014年にニューヨークに出した支店の『コスメ』も、ニューヨーク・タイム紙が「Top New York Restaurants of 2015」の1位に選出するなど、美食界のモダン・メキシカンへの注目度も年々、増しています。
そうした、モダン・メキシカンで日本に最初に上陸したのは、1997年にニューヨークにオープンしたモダン・メキシコ料理店『MAYA』で名声を博したリチャード・サンドバル(1967年生まれ)の店を、ミールワークスが2014年に銀座コリドー街の端に招聘した『TORO TOKYO』でしょう。開業から5年が経ちますが、テレビで何度か紹介されたこともあって、安定した人気を得ています。
もし、最新のメキシコ料理を食べてみたいとおっしゃるなら、昨年夏に恵比寿郵便局の裏にオープンした『KIYAS』がうってつけです。この店の木屋太一シェフは、薪焼きのレストランを出そうと思って本場バスク地方の『エチェバリ』に勉強に行った帰り、パリでたまたま入った『OXTE』というメキシカン・レストランの料理に魅せられて(パリもモダン・メキシカンがブームなのだそうです)、急きょ業態変更を決意したという、変わり種。メキシコ料理の経験が短い分、『プジョル』やオアハカにも足を運んでよく勉強しており、凝ったモダン・メキシカンを出しています。
ちなみに食べログの『KIYAS』の評価は3.03(2月26日現在)。本当にその程度の店なのか、ぜひ一度行ってみてください。食べログの限界がおわかりいただけると思います。
『TORO TOKYO』は、NYのモダン・メキシカン『MAYA』のシェフ、リチャード・サンドバルが、アメリカ、UAE、カタールに展開している南米料理のブランド。メニューには珍しいメキシコ料理も。コリドー街に面したオープンな作りで、夏場はバー・カウンターが若者で賑わいます。◆住所:中央区銀座6-2先銀座コリドー街 ◆電話:03・6274・6361
『KIYAS』は恵比寿の『ikra』や『i-table』等の人気店にいた木屋太一シェフが、昨年8月に同じ恵比寿に出した、6500円のコース1本のモダン・メキシコ料理店。トルティーヤは自家製! シェフがアメリカ育ちで英語がペラペラのせいか、客席には外国人客も多く見かけられます。◆住所:渋谷区恵比寿2-9-2 ◆電話:03・6432・5725
【秘訣】世界の料理のトレンドは、躊躇なく取り入れる
取材・文/ホイチョイ・プロダクションズ