年収400万円未満でも2拠点で暮らす
都市部と地方、両方に拠点を持って、生活に合わせて行ったり来たりする“2拠点生活者”は、近年それほどめずらしい存在ではなくなった。昨年、住まい情報誌『SUUMO』を発行するリクルートは、都心と田舎の2つの生活=デュアルライフを楽しむ人を「デュアラー」と名づけ、2019年のトレンドのひとつに挙げた。
2011年の3・11を機に、特に若い世代に高まった地方移住トレンドが落ち着いた感がある今、移住したい人とデュアラーの属性や目的は、重なる部分がかなりあると見られる。
ひと昔前までは、田舎にも家がある=別荘=富裕層というイメージが強かったが、デュアラーの場合はそうではない。リクルート住まいカンパニーが行った「デュアルライフ(2拠点生活)に関する意識・実態」調査によると、現在デュアルライフを実施している人は、20〜30代の若い世代で5割を越える。家族構成では、既婚・子ありが4割を占める。年収では、600万円未満で3割を超え、800万円未満までで5割を超える。注目すべきは400万円未満の16.2%という数字だろう。年所得400万円未満の世帯が4割を占める今の日本、可処分所得が低下する一方でデュアラーが増えているのだ。
次に、2拠点目の住居形態だが、持ち家の割合が6割にとどまり、賃貸とその他で約4割だ。都市部に持つ拠点は持ち家、田舎の2拠点目は賃貸という組み合わせがもっとも多い。
もちろん資金面の問題もあるだろうが、いつでも引き払えることも2拠点目の条件として重視されているのではないか。近年、移住希望者をターゲットにした不動産物件を数多く見るようになった。移住したいが資金は少ない人にとって、家が古くても、不便な立地でも、それに見合う価値があればいい。それは豊かな自然環境だったり、広い敷地だったり、価格の安さだったりする。
不在時には「何かしらに運用」している人が多い
デュアラーの多くは、ふだんは都市部で仕事している。しかし不在時の2拠点目をただ遊ばせているわけではない。5割近くがしっかり運用しているところが、従来の別荘所有者とは異なるデュアラーの特徴かもしれない。
運用方法としては「共同で使用している」「友人たちに貸し出している」という共同使用することでランニングコストを抑えるパターン。持つべきは友だちだ。
次に「賃貸物件、レンタルスペースとして貸し出している」「地域住民等に貸し出している」。前者は有料サービスである程度の稼ぎになるだろう。後者は無料だろうが、地域住民に喜んでもらえるサービスを提供することで、自身がそのコミュニティに参加しやすくなるわけで、無料であっても付加価値の高い利用法だ。
そのほか「宿泊施設として運営している」が約2割に上る。もちろん場所によるが、民泊として有効に利用できているようだ。