資生堂パーラーの歴史と伝統を体現した「ストロベリーパフェ」
資生堂パーラーを代表するメニューのひとつが、昭和30年代に登場した「ストロベリーパフェ」。時期によって産地、品種を変えながら夏も切らさずに通年で提供している。使用するいちごは希少な品種が多いが、1カ月単位でメニューを展開するため、安定して供給できて確実に品質を保てるものを選定しているという。
資生堂パーラー 銀座本店 サロン・ド・カフェ 飲料長の橋本和久さんが「越後姫」と出合ったのは2年前とのこと。テストとして通販で購入したそうだが、大粒だが色味がくすんでいるものもあり、円錐形のすらりとしたいちごのイメージとは異なるごつごつとした感じで、最初はあまり好印象ではなかったという。その後、新潟県と直接やり取りして改めて越後姫を入れてもらい、越後姫の本当の姿と味を知り、ぜひ東京でも食べてもらいたいと今回のコラボレーションが実現した。
「ストロベリーパフェは月に3種類ほど用意している。いちご、いちごソース、創業当時から同じレシピで作っている伝統のバニラアイスクリーム、しつこくはないがコクがある軽やかな生クリームで構成。資生堂パーラーで提供するストロベリーパフェに使ういちごは基本、すべてそのまま食べても非常においしいもの。ソースはそのいちごと同じものを使い、食感を損なわないためにすべて手でつぶして作る。オリジナルのアイスクリーム、生クリームと合わせるとより一層おいしくなるように仕立てている。
資生堂パーラーのストロベリーパフェはクラウンスタイルで盛り付けるのが基本。今回のようなスペシャルはさらに扇のようにひろがるカットを施し、扇の間隔も一定にして美しさを出している。使用するいちごは7~8粒で、上には5粒飾り、ソースで2~3粒使っている。
パフェはどの角度から見ても美しく、食べてもおいしいものだが、どうしても上から食べなければならない作り。お客様によっては一層ずつきれいに召し上がる方もいれば、最初からざっくりとかき回して召し上がる方もいる。どのような食べ方でも大切になるのがバニラアイスクリームで、全体をまとめる役割がある。順番に上から食べてバニラアイスで落ち着くというものでもいいし、バニラアイスといちご、ソースを混ぜ合わせて食べてもおいしい。私はこの食べ方が好きと感じていただくのも楽しみのひとつ」(橋本さん)
【AJの読み】お姫様にふさわしい別格のストロベリーパフェ
昨今はさまざまな食材を組み合わせたゴージャスなパフェが登場しているが、素材の良さを活かしたシンプルな構成のパフェが一番おいしいと感じる。おそらく、子供のころの昭和時代のパフェは、果物にバニラアイスや生クリームと組み合わせたシンプルなものが多かったからかもしれない。
資生堂パーラーで最初にストロベリーパフェを食べたのは、小学6年生だったと思う。世の中にこんなにおいしいものがあるのかと驚いた記憶がある。次に行ったのは高校2年生のときでお小遣いを貯めて、友達と一緒に食べた。そのときも涙が出るくらいおいしいと感じた。社会人になってからもいちごの時期に必ず一度は食べるが、最近はいちごの品種も多様化して、ようやく素材による味の違いがわかるようになってきた。
「高級な果物はいろいろあるが、皮をむく、カットするなど手を加えないと食べられないものが多い中、いちごはそのまま食べられる。そして一粒がお皿に乗っているだけで華になる。果物の中の王様ともいえるすばらしいものだと思う。丹念につくられた農家の方々の想いを形にするのが我々の仕事であり、今回の越後姫のパフェもいちごのおいしさを存分に味わってもらえるとうれしい。
資生堂パーラーは敷居が高い、なかなか入りづらいと思われていて、お客様の意識として特別なときにとか、一生に一度という方もいらっしゃる。そういう方々を残念な気持ちにさせることだけは絶対にできない。幸せな気持ちで帰っていただきたい。そのためにスタッフ全員が一生懸命作っている」(橋本さん)
資生堂パーラーのストロベリーパフェは、いちごといちごソース、バニラアイス、生クリームのシンプルな構成。私の食べ方はトッピングのいちごを半分食べてから、アイスと生クリーム、いちごソースをそれぞれ少しずつ食べて、グラスの半分まで行ったらすべてを混ぜ合わせるというパターン。本当に甘くてやわらかい越後姫との組み合わせは感動の余り言葉も出ない。詳細を説明するよりも実際に味わっていただくのが一番だと思う。
文/阿部 純子