春の引っ越しシーズン、賃貸物件の退去時に気になるのが、入居時に敷金を支払った場合に、どのくらい戻ってくるのかということ。しかし、中には敷金が戻らないどころか、過剰な額を請求されてしまうこともあるという。もし、そのような事態に陥ったらどうすればいいか。その原因や対処法、予防策を、敷金診断士に聞いた。
よくある賃貸退去時のトラブル
多くの人は、賃貸物件の退去時に、さまざまなトラブルに見舞われている。
2年前の調査になるが、株式会社ハウスメイトパートナーズが2017年4月に実施した、賃貸住宅でのひとり暮らし経験のある20~40代の引っ越し経験のある男女への「引っ越し時のトラブル経験」に関する実態調査では、4割弱の人が賃貸住宅退出時に失敗・トラブル経験があり、そのトラブルの中身は「敷金が戻ってこなかった」が31.0%、「入居したときからあった傷や汚れの修繕費を請求された」が26.8%となった。
返金があると思っていた敷金が返ってこない、というのはトラブルの中でも上位であるようだ。
退去時に過大請求された!原因は?
賃貸物件の退去時に、敷金が返ってこないどころか修繕費を過大請求されてしまうことがあるといわれる。その主な原因は? 行政書士で敷金診断士でもある梶田順久さんに聞いた。
「過大請求されるのは、大家さんが直接管理している物件に多いように思います。仲介業者が入っている場合は、国土交通省のガイドライン等の専門知識を持っているため、大きな被害を受けることはないと考えられるからです。とはいえ、仲介業者さんはどちらかというと大家さんの味方になりやすいので注意は必要です。
原状回復の費用負担が発生するのは、クロス(壁紙)の損耗が一番多いです。ただ、クロスの場合は、長期間借りていると負担割合が少なくなり、少額負担で収まることが多いです。一方で高額になりやすいのはフローリングの過失損耗です。フローリングは部分補修がほとんどなので実費負担となります。また物を落としたりすると、へこみの補修が必要です。最近はペットブームなので、ペットの飼育による損耗、特に柱などに猫の爪研ぎ痕などがあると高額請求になることもあります」
対処すれば戻ってきた事例はある
過大請求されても、然るべき対処したことで、通常の範囲内の費用負担で収まった、もしくは敷金が返ってきた事例はあるのだろうか?
「事例は数多くあります。2020年4月1日から施行される民法改正により、『敷金の性格』、『原状回復費用の意味』などが、より具体的に条例の中に組み込まれました。いずれも判例を条文として上梓したようなものですが、問題は過失の度合いをどのように判断するかです。過失の度合いは現場を見ないと判断できませんので、現場を見た上で意見をすると、その効果は大きいと思います」
万が一、過大請求されたと感じることがあれば、全国の消費者センターや不動産適正取引推進機構、東京都行政書士会、NPO法人 日本住宅性能検査協会などに相談するのがいいと梶田さんは話す。
【参考】法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」