妊婦の胆嚢摘出術は産後に行うべき?
妊娠中の女性は、比較的、胆石症になりやすいとされる。しかし、妊娠中の胆嚢摘出術は危険を伴う可能性があるため、出産後まで遅らせるべきだとする研究結果が、米テンプル大学医学部外科学教授のHenry Pitt氏らにより報告された。
詳細は「Journal of the American College of Surgeons」2月12日オンライン版に掲載された。
Pitt氏らは今回、カリフォルニア州のデータベースを用いて、2005~2014年に、妊娠第三トリメスター(妊娠28~40週、分娩前90日以内)に胆嚢摘出術を受けた妊婦403人と、分娩後3カ月以内に手術を受けた女性1万7,490人のデータを分析した。
低侵襲性の胆嚢摘出術後には、ほとんどの患者がその日のうちに退院できる。しかし、妊娠後期に胆嚢摘出術を受けると、分娩後に受けた場合に比べて入院を必要とする確率が高く(85%対63%)、開腹手術を必要とする確率も高かった(13%対2%)。
また、妊娠後期に胆嚢摘出術を受けた女性は入院期間が長く(3日対1日)、医療費が高くなり(約2万ドル対1万7,500ドル)、術後30日以内の再入院率が高いこと(10%対4%)も明らかになった。
さらに、妊娠中に手術を受けた女性は早産リスクが2倍であったほか、子癇(けいれん発作)や出血、早産などの妊娠合併症が重度であった。
Pitt氏は「この研究の重要なポイントは、胎児が十分に発達していない時期の早産がみられたことだ。早産は、新生児死亡や子どものさまざまな有害転帰と関連することが分かっている」と指摘。
「だからこそ、妊娠中に症候性の胆石症を発症した女性は、できる限り胎児が成熟するまで胆嚢摘出術を遅らせる必要がある」と述べている。
米国消化器内視鏡外科学会のガイドラインでは、妊娠中に症候性の胆石症を発症した場合には、妊娠後期の胆嚢摘出術は母子ともに安全だと推奨されている。
一方、今回の研究では、ほとんどの妊婦に対し、胆嚢摘出術は分娩後に実施されていることも明らかになった。
この点について、Pitt氏は「ガイドラインによる推奨に反して、実際には、外科医や産婦人科医は、妊婦に対する胆嚢摘出術は分娩後の方がよいと考えていることが示された」と述べている。
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.journalacs.org/article/S1072-7515(19)30021-3/fulltext
構成/編集部