中国といえば、QR決済大国。都市部の百貨店やスーパーマーケットはもちろん、商店街や小さな屋台まで、ほぼ全てにおいてQR決済が使える。『Alipay(アリペイ)』と『WeChat Pay(ウィーチャットペイ)』の2大勢力が存在しており、これさえあれば、現金はもちろん不要。直接、銀行口座に紐づいているので、カード決済も必要ない。中国の銀行口座がない人でも、空港に設置されているポケットチェンジを使えば、『WeChat Pay』のウォレット機能を開くことができるのだ。
先日、中国で最もQR決済が進んでいると思われる阿里巴巴(アリババ)本社のある杭州に向かった。隣接した巨大ショッピングモール「亲橙里(チンチェンリー)」では、洋服やインテリアグッズはもちろん、カフェやスーパーマーケットでもQRコードによるキャッシュレス決済が可能だ。地下にある巨大生鮮食品売り場「盒马鲜生」では、好きな食品を好きな調理法で提供してくれて、その場で食べることもできる。また自宅用の食品は、3km圏内なら30分以内で無料で配送してくれる。
レストランでは、『Alipay』や『WeChat Pay』のアプリからテーブルに貼られたQRコードを読むと、メニューが個人のスマホに表示される。火鍋のような料理では特に、好きなものをサクサク頼めるのが便利。誰がどんなものを頼んだかもわかるので、オーダーミスがないのがいい。店員も余裕があるせいか、今日のオススメや食材の説明に時間を割いてくれるのが楽しい。だが驚くのはまだ早い。何と、路上で営業する焼き栗の露店でもQR決済ができるのだ。彼らも小銭を用意する必要がないし、現金化せずキャッシュレス決済を使って仕入れを行なう。
アリババで働くフランス人の友人は、中国で働いている2年間、一切、人民元を手にしたことがないという。光熱費や保険料などもアプリから支払えるので、現金を持つ必要がないのだ。筆者もそれをすぐに実感した。空港を出てすぐにQR決済アプリを開き、中国版UBERの滴滴を呼ぶ。行列のできるカフェにドリンクの注文を入れておき、テークアウト時に待つことなくスマホで決済する。ホテルはもちろん、レストランでも、お店の人が指定するQRコードを読めばスマホですべてキャッシュレスで決済できるのだ。世界で最も進んだキャッシュレス社会を見た。
川端由美
工学修士、元エンジニア。自動車とテクノロジーを中心にジャーナリスト活動を展開。最近は、中国スタートアップに注目している。