脳のネットワークを切り替えて仕事に役立てる方法

デフォルトモードネットワークは脳にとって良い？悪い？

デフォルトモードネットワークを続けることは脳にとって良い状態なのか。それとも悪い状態なのか。

「デフォルトモードネットワーク自体に良い悪いはありません。先に述べたように、デフォルトモードネットワークは記憶や想像、身体意識に関わるネットワークです。問題になるのは、適切なタイミングで適切なデフォルトモードネットワークが働いているかどうかです。例えば車の運転中に過度にデフォルトモードネットワーク優位となってぼんやりしていれば危ないでしょうし、あるいはブレインストーミングを行う場面で、上司の顔色ばかりに気が向いて、エグゼクティブネットワークが優位に働き、創造性に関わるデフォルトモードネットワークの働きが抑えられているような状況は好ましくないでしょう。

デフォルトモードネットワークが良い悪いというよりは適切なタイミングでデフォルトモードネットワークを働かせられること、つまりセイリエンスネットワークが適切に機能しているかどうかが日常生活を送る上では重要になります」

セイリエンスネットワークはどのようにして鍛えられるのだろうか？

「一定期間、瞑想のトレーニングを行うことで、デフォルトモードネットワークとエグゼクティブネットワークの切り替えに関わるセイリエンスネットワークの働きが強くなることが報告されています」

ネットワークの切り替えを仕事に役立てるには？

デフォルトモードネットワークとエグゼクティブネットワークの切り替えは、ビジネスパーソンが毎日仕事をする上で、どのように役立てることができるだろう。

「デフォルトモードネットワークは脳の中にある手持ちの情報を組み合わせて新たな情報を作り上げる働きがあります。未来の予想をするときには過去のさまざまな記憶の断片を組み合わせて作り上げますし、新しい料理のレシピや問題の解決方法というのも、過去のさまざまな情報を組み合わせることで作っています。

その意味ではデフォルトモードネットワークというのは、新たなアイディアを出さなければいけないときや、新製品のコンセプトなどを考えるような創造性が必要とされる場面で重要になるでしょう。

古来哲学者は散歩を好んでいたとされますし、過去にプロ経営者として名を馳せた原田泳幸さんは、その著書の中で、一日のうち、ブラブラと社内を歩く習慣を持っていたことを述べています。こういったことを考えると、絶えずスマートフォンなどで情報をインプットするだけでなく、時にはスマートフォンを懐にしまい、ぼんやりする時間を持つことが、クリエイティブであるためには必要かもしれません。真に生産的であるために、あえて生産しない時間を持つことが、これからのビジネスパーソンに大事になってくるのではないでしょうか」

【取材協力】
佐藤洋平さん
筑波大学国際関係学類卒業後、飲食業、理学療法士業務を経て富山大学大学院生命融合科学教育部博士課程在籍。心と体の関係について研究を行う傍ら、脳科学に関するコンサルティング業務に従事。Facebook「脳科学　リハビリテーション」にて脳科学エッセイ配信中。
https://www.facebook.com/sinkeikagaku/

取材・文／石原亜香利