FI車が押しがけ不可能なのはなぜでしょうか? ほとんどのキャブレター車は重力で自然に燃料が供給されていますので、押しがけで強制的にエンジンが回されても大丈夫。でもFI車は電動ポンプで燃料を供給する仕組み。完全にバッテリーが上がり電力ゼロの場合はポンプも作動しないので、燃料が供給されずエンジンはかかりません(※キャブレター+燃料ポンプのバイクも存在します)。
なお、この記事の冒頭では「FI車での押しがけは(ほぼ)不可能」と含みを持たせましたが、ポンプが作動する程度の電力が残っていれば、かろうじて押しがけが可能なこともあります。が、ECU(エンジンコントロールユニット)やら何やら、最近のバイクはとかく電気頼み。電力が乏しい状態でヘタこくと、故障の原因になります。
長々と書いてきましたが、いずれにしてもバッテリー上がりからの押しがけは応急処置に過ぎません。速やかにバッテリーを充電するか、バッテリーを交換するなどして対処しましょう。
それにしても、押しがけひとつ書くにしても、バイクの場合は機構が多様すぎて、できるだけ多くをカバーしようとするとどうしても文章が長くなりますね……。「バイク」という大ざっぱなくくりでバイクの操作について語るのは、本当に難しい。その多様性がバイクの面白さではあるのですが……。
長々ついでに、個人的にはバッテリー上がりは嫌いですが押しがけは大好きです。かつては世界グランプリが押しがけスタートだったこともあり、2ストエンジンのバイクで押しがけしてパランパンパンとエンジンがかかった瞬間なんかは、気分が高揚したものです。レースイメージの「儀式」だったんですよね。2ストエンジンもほぼ全滅し、押しがけもやりにくくなり、バイクにまつわる儀式もだいぶ減ってしまいました。
文/高橋 剛