A:おいしい時とおいしくない時があります
「アンコ抜きってなんだよ! 鯛焼きからアンコを抜いちゃったら皮だけじゃんかよ!」「オレは皮だけでいいんだよ!」「いやアンコがないと意味ないだろう!」という話ではありません。アンコ抜きとは、バイクのシート高を下げるためにシート内部のスポンジを削るなどして除去することです。シート形状を変えるために(段付きにするなど)行う場合もあります。
アンコ抜きの主な目的は、足着き性の向上を狙ってのこと。スポンジを削るということはシートが薄くなるわけですから、もちろん直接的な効果があります。そういう意味では「おいしい」のですが、場合によってはおいしくなくなる可能性もあります。
ここでDIYでアンコ抜きする場合のやり方を超簡単に説明すると、
(1)シートの表皮を留めているタッカー(巨大ホチキス)の針を取り外し、表皮を剥がす。
(2)スポンジを削る。
(3)タッカーを打ち直して表皮を戻す。
これだけです。実際にはスポンジの削り方にはノウハウが必要ですし、表皮を戻すのも容易ではありませんので、よくよく調べて必要なアイテムを揃えてから取りかかった方がよいと思います。
さて、おいしくならない可能性は、実はかなりあります。まっさきに挙げられるのは、クッション性の低下によって乗り心地が悪くなるかもしれないこと。極端にスポンジを薄くなるすると路面からの突き上げなどをガツガツ食らい、乗れたもんじゃなくなる可能性があります。「アンコ抜きしたはいいけど、長時間のライディングなどもってのほかになっちゃった」なんてケースも。
もうひとつは、操縦性に変化が生じるかもしれないこと。シート高が低くなりライダーの着座位置が下がるのに伴って重心位置も下がり、ハンドリングは安定傾向になります。が、その分バイクらしい軽快感が損なわれるかもしれません。これはケースバイケースで何とも言えませんが、ハンドリングにわずかでも変化が生じることは覚悟が必要です。
また、ハンドルやステップ位置とのバランスも変わります。シートが低くなると相対的にハンドルが高くなります。ステップ位置が近付くことになるので、膝の曲がりがきつくなるかもしれません。バイクのポジションは、ちょっとの変化が大きく体に影響するものです。さらに、不器用な人がDIYした場合は、表皮の防水性が低下したり、形状が左右対称にならない場合もあります。
アウトドアにさらされ、ハンドリングやポジショニングにも大きく影響するバイクのシートは、非常に重要な機能パーツです。アンコ抜きを請け負ってくれるシート専門業者もありますので、安易にDIYせずに業者さんに相談した方がよい結果が得られると思います。業者さんのアンコ抜きは「高いなぁ〜」と感じるかもしれませんが、体格やバイクの乗り方なども含めて相談に乗ってくれますよ。
文/高橋 剛