はるか昔、激動の時代を生きた人々を描く歴史映画。壮大で迫力ある作品が多く、国を問わず安定的な人気を誇るジャンルだ。
どんなに苦しい状況でも希望を捨てることなく前向きな登場人物が多いというのも、歴史映画の特徴。時を越えて、勇気づけられるという人も多いだろう。
そこで今回は、舞台となる国別(必ずしも製作国と一致していないのでご注意)に、の歴史映画をご紹介する。
歴史映画: 海外編
(1)古代ローマ・ギリシア
『グラディエーター』(2000年)
リドリー・スコット監督、ラッセル・クロウ主演の歴史スペクタクル。アカデミー賞、ゴールデングローブ賞で作品賞や主演男優賞などを受賞。ホアキン・フェニックスが、めちゃくちゃ憎たらしい悪党を好演している。
ローマ帝国の皇帝マルクス・アウレリウス(リチャード・ハリス)から絶大な信頼を寄せられていた将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)は、暴君コモドゥス(ホアキン・フェニックス)の陰謀で剣闘士(グラディエーター)にまで転落する。剣闘士とは、円形競技場コロッセウムで死ぬまで戦う奴隷のこと。愛する家族を皆殺しにされた元将軍の、壮大な復讐劇を追った傑作!
『トロイ』(2004年)
古代ギリシアのトロイア戦争を題材にした映画。ブラッド・ピット主演。オーランド・ブルームやダイアン・クルーガーなど他のキャストも豪華だ。
長年対立を続けてきたトロイとスパルタの和平協定が結ばれた日、トロイの王子パリス(オーランド・ブルーム)はスパルタの王妃ヘレン(ダイアン・クルーガー)と恋に落ちた。駆け落ち同然でヘレンをトロイに連れ帰ったパリスに対して、ヘレンの夫であるスパルタ王は当然激怒する。禁断の恋が引き起こしたトロイ侵攻の指揮を執るのは、ギリシアの英雄アキレス(ブラッド・ピット)。
(2)フランス
『マリー・アントワネット』(2006年)
ソフィア・コッポラ監督、キルスティン・ダンスト主演。ダンストは、コッポラ監督の『ヴァージン・スーサイズ』(1999年)にも出演している。『ヴァージン・スーサイズ』と同じく、本作も色鮮やかな映像美が特徴。フランスの有名菓子メーカー『ラデュレ』が協力し、本物のヴェルサイユ宮殿で撮影されたことも話題を呼んだ。
オーストリア・ハプスブルグ家からたった14歳でフランスに嫁いだマリー・アントワネット(キルスティン・ダンスト)の数奇な人生を描いた作品。“ワガママで贅沢な姫”というレッテルを貼られがちなアントワネットだが、ひとりの女性として、人間としての彼女をコッポラ監督が繊細に描写している。
『マリー・アントワネットに別れをつげて』(2012年)
『007 スペクター』(2015年)でボンドガールを務めたレア・セドゥ主演の仏西合作映画。マリー・アントワネットにダイアン・クルーガー、ポリニャック夫人にヴィルジニー・ルドワイヤンと、女優陣が豪華!フランスの小説家シャンタル・トマの『王妃に別れを告げて』が原作。
フランス王妃マリー・アントワネットの朗読係シドニー・ラボルド(レア・セドゥ)の視点から、フランス革命時のアントワネットとフランスを描く。
『仮面の男』(1998年)
レオナルド・ディカプリオ主演。アレクサンドル・デュマの『ダルタニャン物語』や鉄仮面伝説をベースにしたエンターテインメント性の高い映画。三銃士を演じるのは、ジョン・マルコヴィッチ、ジェレミー・アイアンズ、ジェラール・ドパルデューの実力派俳優。
かつてルイ13世に仕えて大活躍していた三銃士も年を取り、現役を引退。ダルタニアン(ガブリエル・バーン)は銃士隊長としてルイ14世(レオナルド・ディカプリオ)に仕えていた。ルイ14世に対する民衆の不満が日に日に高まる中、地下牢に閉じ込められている謎の鉄仮面男の正体がルイ14世の双子の弟フィリップ(レオナルド・ディカプリオ)であることが判明。三銃士は、フィリップとルイ14世の入れ替えを計画する。
(3)イギリス・スコットランド
『エリザベス』(1998年)
イギリスが誇る演技派女優ケイト・ブランシェットがエリザベス1世を演じた。「私はイギリスと結婚した」という言葉の通り、エリザベス1世は生涯独身を貫いて国のために人生を捧げた。
イングランド王ヘンリ8世と侍女アン・ブーリンの間に生まれたエリザベス1世は、25歳の若さでイギリスの女王に即位。献身的な姿勢で40年以上にわたって国を収め、“処女王”として民衆に慕われたエリザベスの素顔に迫る。
ちなみに、“処女王”というニックネームが意味するのは“生涯未婚”であって、“恋愛経験ゼロ”ではない。実際には恋人的な存在の男性がいた。本作にも、ひとりの女性として恋に傷つくエリザベスの様子が描かれている。
『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(2007年)
『エリザベス』の続編。イギリスの“黄金時代(ゴールデン・エイジ)”を築いたエリザベス1世が、1588年アルマダの海戦でスペイン無敵艦隊を撃退した時の様子を描いている。
『ブレイブハート』(1995年)
メル・ギブソンが主演・監督。『グラディエーター』(2000年)と並んで根強い人気を誇る、“英雄が暴君に立ち向かう系”の歴史映画。アカデミー賞で作品賞など5部門を受賞した。
13世紀末のスコットランド。残虐非道なイングランド王エドワード1世のスコットランド支配に対し、英雄ウィリアム・ウォレス(メル・ギブソン)が立ち上がる。
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2017年)
『プライドと偏見』『つぐない』のジョー・ライト監督。演技派俳優として名高いゲイリー・オールドマンが、“イギリスの英雄”ウィンストン・チャーチルを熱演した。瘦せ型のオールドマンはチャーチルに似せるために特殊メイクをして撮影に臨み、見事アカデミー賞主演男優賞を獲得した。
第二次世界大戦中に首相に就任した、ウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)。フランスに続いてイギリスにもナチスドイツの脅威が迫る中、チャーチルはいかにしてヒトラーの魔の手からイギリスと世界を救ったのか。
『英国王のスピーチ』(2010年)
『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズや『キングスマン』シリーズのコリン・ファース主演。アカデミー賞とゴールデングローブ賞では、主演男優賞をはじめ多部門で受賞した。
イギリスのジョージ6世(コリン・ファース)が言語療法士ライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)の指導のもとで吃音を克服し、宣戦布告時のラジオ演説を行うまでを描いた感動作。ジョージ6世は、在位中のエリザベス2世の父親にあたる。誠実で優しい性格の持ち主であったため、“善良王”として国民に愛された。
『未来を花束にして』(2015年)
主演のキャリー・マリガンに加えて、ヘレナ・ボナム=カーター、メリル・ストリープなど錚々たる名女優が集結!原題の『Suffragettes(サフラジェット)』は、20世紀初頭イギリスで婦人参政権を求めて過激な活動を展開した婦人社会政治連合(WSPU)の通称。どれだけ弾圧されても不屈の精神で立ち上がった、誇り高き女性たちの実話を題材にした感動作。
主人公のモード・ワッツ(キャリー・マリガン)は、工場で働くごく普通の主婦。ある日、女性参政権を求める過激派活動家のイーディス・エリン(ヘレナ・ボナム=カーター)と偶然出会ったことで、モードの運命が大きく変わり始める。
イーディス・エリンのモデルは、柔術家イーディス・ガラッド。女性活動家は嫌がらせを受けることが多かったため、柔道が護身術として役立っていたそうだ。
『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011年)
オスカー女優メリル・ストリープ主演。ストリープは、本作で2度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞した。
“鉄の女”と呼ばれたイギリス初の女性首相マーガレット・サッチャーの回想録。マーガレットをいつも温かく見守っていた夫デニス・サッチャー(ジム・ブロードベント)との絆にもスポットライトを当てている。デニス・サッチャーは好奇の目に晒されながらも“ファースト・ジェントルマン(首相の夫)”としての役割を堂々と務め、政治家としての妻を支えた。