〇製造方法、出荷時の状態、季節でも名称が変わる
日本酒の造り方は、玄米を精米し、蒸して麹を造る。この麹と蒸米、水、酵母を入れて酒母(酛:もと)を作り、さらに3回に分けて麹・蒸米・水を加え(仕込み)もろみを作って発酵させる。ほどよく発酵した状態を見極めてもろみを搾り酒にする。搾った後に残るのが酒粕。搾った酒を濾過して約60度の温度で火入れ(熱処理)を行い、貯蔵・熟成させてから、再度火入れして瓶詰される。
同じ銘柄でも製造方法や出荷時の状態で名前が変わる。「生酒」は製造工程で一度も火入れしないもの。「生貯蔵酒」は搾りたての日本酒をそのまま低温で貯蔵して、出荷時に一度だけ火入れをする酒。「生詰酒」は火入れして貯蔵した、ほどよく熟して品質が安定した酒。「原酒」は水を加えない状態の(通常は水を加えてアルコール分を調整する)アルコール度数が18~20度と高い酒。「荒走り」はもろみを搾るときの、搾りたての最初の部分の酒。「中汲み」は荒走りに続いて流れ出る部分の酒。「にごり酒」はもろみを目の粗い布で漉しただけの白く濁っている酒。
「熟成古酒」は通常1年以内に出荷されることが多い日本酒を3年以上熟成させたもので、なかには10年以上熟成したものもある。「新酒」は年度内に出荷されたもので、日本酒の酒造年度は毎年7月から翌年の6月。「冷おろし」は一度火入れした後、秋まで貯蔵して二度目の火入れをしないで出荷する酒。「生酛(きもと)」は天然の乳酸菌で酵母を増やす伝統的な製法。
〇ラベルが読めるとより深く知ることができる
特定名称やアルコール分、原料米の種類、精米歩合や酸度、使用酵母など、ラベルにはその酒の情報が満載なので、ラベル内容を理解できるとぐっと好みの味を探しやすくなる。ちなみに製造年月は記載されているが、日本酒には賞味期限がない。冷暗所で保存すれば熟成に応じた酒を楽しむことができる
時間とともに酒が熟成するにつれて、ワインと同様に酒に熟成感が増してくる。エキス分の多い酒、甘みが強い酒、純米酒のように味が濃いタイプの酒であればあるほど褐色に変化するが、大吟醸のようにもともと淡麗ですっきりした酒は、時間が経過してもあまり変色はしない。酒の種類によって熟成の仕方にはかなり違いが出て、中国の老酒に似た色、香りになるもの、カラメル臭、甘く焦げっぽいなどの特徴が出てくる。酒の質に加えて、どのような環境で貯蔵したかによっても熟成具合は左右される。蔵元が熟成をさせた「古酒」は、味や香り、色が千差万別でそれこそが古酒の個性といえる。
〇味と香りで4タイプに分かれる
香りが高いか控えめか、濃厚な味か若々しい味かにより、日本酒は大きく4タイプに分かれる。
さらに地域性の特色を知ると良い。新潟は淡麗辛口、東北でも宮城県、山形県、秋田県のそれぞれのタイプを知るなど、地域ごとのイメージができてくると、しっかりとしたものが飲みたい日は西の酒、ライトなものなら北の酒と選びやすい。
若い世代でこれから日本酒を始めるのなら、炭酸ガスが多く含まれる発泡酒や甘口タイプから入ると飲みやすいかもしれない。また、食生活になじみがある自分が育った地域で造られている、地元の酒から試してみるというのもひとつの手だ。