奈良と聞けば大仏様に代表されるように神社仏閣の印象が強いだろう。名物グルメいえば大和茶、柿の葉寿司、三輪そうめんといった渋いベテラン役者ばかり揃っていると思っていた。今回、JR東海主催の1泊2日プレスツアーに参加することができ、そこで出会った素敵なお店がまさに目からウロコ。老若男女問わずに楽しむことができる〝新しい〟奈良グルメをご紹介しよう
01:奈良まちの芸妓さんが受け継ぐ 割烹「つるや」
JR奈良駅から西に歩くと、町家づくりの古風な民家が軒を連ねる奈良まちが広がる。その中でも猿沢池に近い場所はかつて興福寺の別院があったことから元林院と呼ばれるエリア。この元林院一帯は明治以降に花街として栄えたところだが、今や花街としての賑わいはなく、興福寺や東大寺ではあれほど見られた観光客の姿もはたと見えない。そんな静かな路地にひっそりと行灯をたてるのが割烹「つるや」だ。
置屋と呼ばれる芸舞妓さんを抱え育てるお店であり、芸舞妓さんを呼んで楽しむお茶屋でもあり、そして古民家を改装した雰囲気抜群のバーでもある「つるや」。代表は自身も芸妓である菊乃こと大野菊乃さん。衰退しつつあるお座敷文化をより多くの人に知ってもらうために、あらゆる業態で飲食店を展開する実業家でもある菊乃さんは、2013年に先代から「つるや」を引き継いだ。「お茶屋というのは敷居が高い。システムもわかりにくく会計がこわいので気軽に楽しめません」と、普段お座敷遊びなどとは縁遠い筆者のような客にもその風情を楽しんでもらおうと、システムの明朗化やサービス向上に取り組んでいるという。例えば芸妓さんをお座敷に呼ぶと、お座敷にいる時間のお花代にその行き帰りの時間分もプラスされるのが通例だったのを、「つるや」ではお座敷1時間あたりで単価を設定して明朗会計としているのだ。
割烹「つるや」の代表 大野菊乃さん。自身も「つるや」で修行をした現役芸妓である。奈良市内では舞妓カフェ「KAMEYA」なども手がける
お茶屋で芸妓さんを呼んで会席、などというのは筆者にとってはどことなくコワイイメージではあるが、どうやらこの「つるや」のランチはいたって庶民的な3種のコースラインナップ。当然芸妓さんを呼ばなくても利用可能だ。料理は和食で小鉢や椀がお盆の上に配置されているスタイル。食事が進むにつれ焼き物やご飯が運ばれてきて、最初の見た目よりボリューミーだ。食事中、配膳や料理の質問に答えてくれていたのはまだ舞妓になって数ヶ月の菊愛(きくえ)さん。「すんまへん」といって椅子(そう客間はカーペット敷きのテーブルセット)の後ろを通る姿はおしとやかで優しく、食事を楽しむ雰囲気に花を添えている。
昼のコース料理の一例。このほかにも焼き物(今回は焼き魚でした)やご飯、デザートもつく。
デザートは軽めに、ほうじ茶かと思ったら結構苦みの強いコーヒーだった。
つるやの昼営業は3種類のランチコース
昼御膳(小鉢3種、炊き合わせ、八寸、焼き物、ごはん、香の物、デザート、コーヒー) 1800円
花会席(先付15種の盛り込み、向付、炊き合わせ、焼き物、天婦羅、ごはん、香の物、デザート、コーヒ―) 3000円
極会席(先付、八寸、椀物、向付、炊き合わせ、焼き物、強肴、揚げ物、ごはん、香の物、デザート、コーヒ―) 5000円
※極会席は前日までに要予約
菊乃さんは2019年2月に地元大阪にもつるやの支店をオープンさせる。今後も花街文化の発展に尽力していくとのこと。
割烹つるや
奈良市今御門町26-2
営業時間:11時30分〜14時(ランチ営業)