アートや伝統工芸品も展示
車内をのんびり歩いていると、至る所にアートや伝統工芸品が展示されているのがわかる。その数は「走る美術館」と言っていいほどだ。
職人の手作りによる作品や歴史的に貴重な品々が並び、「瑞風」の客室に用意された特製のアートブックを片手に、列車内で美術鑑賞を楽しむことも可能だ。
瑞風ならではのエピソード
瑞風に実際に乗務しているクルーの方々にそれぞれの瑞風でのエピソードを伺った。
列車長をつとめている大木光徳さんは、「この列車の大きな特徴でもある展望デッキでの出来事ですが、ロイヤルシングルをご利用だった鉄道ファンの方が熱心にずっとデッキで車窓を眺めていらっしゃったんです。私も個人的に鉄道が好きなものですから、山陰本線の餘部鉄橋を渡る絶景区間の前後1時間30分ほど一緒に外で過ごさせていただいたことがあります。また、『瑞風』には先代のトワイライトエクスプレスを愛してくださった方も多くご乗車されています」と話してくれた。
また、先代のトワイライトエクスプレスに乗務経験を持つクルーの手島秀和さんは、「社内で瑞風クルーの募集がかかった際にすぐに手を挙げました。思い出深いエピソードのひとつは、ご乗車中にプロポーズを計画されているお客さまがいらっしゃるということを他のクルーが耳にしたことですね。プロポーズが成功したのち、クルーみんなでお部屋までお祝いにいったことがありました。お客さまの笑顔がやりがいになっています」と話してくれた。
インタビューに応えてくれたクルーの皆さん。右から大木光徳さん、土井貴文さん、福井麻衣子さん、手島秀和さん
そして、「瑞風」には車両の応急処置やメインテナンスもできるテクニカルサービスクルーという職種が、通常のクルーの中にある。万が一にも対応できる車両のスペシャリストだ。例え大きな故障が発生した場合でも、速やかに基地と連携し、列車を可能な限りサポートできる技術力を持つ。
元々、車両基地で車両のメンテナンスを担当していた土井貴文さんは「車両のプロとしての知識とお客さまと直接お話することができるテクニカルサービスクルーの仕事は何物にも代えがたい」と語ってくれた。
クルーズトレインは豪華な車両がもちろん魅力のひとつではあるが、おもてなしや沿線との交流といった人とのかかわりが、旅に奥行きを加えてくれる。
そこでJR西日本では、列車に手を振ってくれたり、おもてなしに協力してくれている沿線の団体などに、感謝を伝ええう活動を行なっている。また、今回のクルーのみなさんも、乗務以外の日には、これから乗車予定のお客さまへ手紙を届けたりしているという。
「瑞風」運行開始時の一コマ。道中、至る所でおもてなしや歓迎イベントが繰り広げられる
「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」は、全列車申し込み制で、2019年2月28日まで第9期2019年7月〜9月出発のコースの申し込みを受付中。
申し込みは郵送または公式webサイトで行われ、申し込み多数の場合は抽選となる。なお、落選しても過去の申し込み回数に応じて当選確率が上がる仕組みになっている。
料金は「ロイヤルツイン」2名1室利用で1泊2日コース27万円、2泊3日コース50万円。最上級の「ザ・スイート」は2名1室利用で1泊2日コース75万円、2泊3日コース120万円(いずれも2019年7〜8月出発分、1名あたり)となっている。
JR西日本が誇るかつてない列車旅とまだ見ぬ西日本の魅力に出会う旅が、きっとTWILIGHT EXPRESS 瑞風には詰まっている。
取材・文/村上悠太