危険な行為に走りやすい若者の特徴は?
首を絞めて意識が薄れる感覚を楽しむ危険な「失神ゲーム」が、10代の若者の間で流行しているが、最近では、目隠しをして危険な行為に挑戦する「バードボックス・チャレンジ」や、カラフルな液体洗剤が入ったカプセルを食べる「タイドポッド・チャレンジ」なども話題となっている。
今回、ボルドー大学(フランス)のGregory Michel氏らの研究で、行為障害や抑うつ症状などの心理的障害のある若者はこうした行為に走りやすい可能性があることが分かった。
研究の詳細は「Pediatrics」1月28日オンライン版に発表された。
Michel氏らは今回、失神ゲームに着目して、2009年と2013年にフランスで行われた2件の横断研究に参加した中学生1,771人を対象に調査を実施した。
その結果、若者の9.7%に失神ゲームに参加した経験があることが分かった。この頻度に男女差はみられず、また、こうした若者では抑うつ症状や行為障害のある確率が約2倍であることも明らかになった。
一方、アルコールやたばこ、マリファナの使用は、失神ゲームへの参加と関連していなかった。
この報告を受け、米コーエン小児医療センターで児童精神医学を専門とするVictor Fornari氏は「行為障害や抑うつ症状のある思春期の子どもを持つ親は、この問題を深刻に受け止め、子どもをきちんと観察して教育する必要がある」と呼び掛けている。
同氏は、今回の研究は、こうした危険な行動を防ぐための予防策を立てる必要性を強調するものだとしている。
失神するまで自分や他人の首を絞めて、そのスリルを楽しむ失神ゲームでは、脳への血液や酸素が欠乏して意識を失う前に、一時的な多幸感がもたらされるという。
また、血流が回復して意識が戻るときにも快感(rush)が得られるとされている。
死に至る危険性もあるこうした行為は、インターネット上で簡単に見つけることができる。また、失神ゲームは死亡する危険性に加えて、慢性頭痛や行動の変化をもたらし、失神の再発や発作、眼の損傷、神経系へのダメージなどにつながることもある。
米レノックス・ヒル病院の救急医であるRobert Glatter氏も、こうしたゲームは脳卒中の発症や窒息、死に至る危険性があると警鐘を鳴らす。
では、なぜ子どもたちはそのような危険なゲームに挑戦するのだろうか。Michel氏らは、抑うつ状態にある若者には、こうした行為が問題に対処するための手段となっている可能性があると指摘する。
また、失神ゲームとの関連は、抑うつ症状よりも行為障害の方がわずかに強かった。この点について、同氏らは「行為障害を持つ10代の若者に共通してみられる反社会的な行動が関与している可能性がある」と考察している。
ただし、この研究は、心理的問題と失神ゲームに挑戦することの因果関係を証明するものではない。
それでも、Glatter氏は「この研究は、子どもたちがこうした行動をとる背景にある遺伝的要因や環境的要因を解明する必要があることが明らかになった」と評価する。
また、同氏は「ゲームに挑戦する行為自体が、子どもたちが“助けを求める声”であるかもしれないし、精神的な葛藤や痛みを和らげるための対処法となっている可能性もある」と話している。
Michel氏によれば、抑うつ症状や行為障害のある若者には、認知行動療法が有益な可能性があるという。
同氏は「この治療法は、失神ゲームへと駆り立てる否定的な感情に対処し、立ち向かうためのツールになるかもしれない」と述べている。
(参考情報)
Abstract/Full Text
http://pediatrics.aappublications.org/content/early/2019/01/24/peds.2017-3963
Press Release
http://www.aappublications.org/news/2019/01/28/chokinggame012819
構成/編集部