馬鹿ゲー路線とは一味違う「Simulator」もの
2014年に、自分がヤギになりきってオープンワールドを冒険する「Goat Simulator(ゴート・シミュレーター)」という、お馬鹿ゲームが出て、これが異例のヒットを放った。
その後、「Job Simulator」やら「Mother Simulator」やらと、柳の下の泥鰌を狙う作品が続々と登場。
「なんとかSimulator」という名のゲームは、すっかりお馬鹿ゲームの1ジャンルであるという誤解が生まれた。
もちろん、「なんとかSimulator」には、真面目に作られたゲームもある。様々な農業機械を駆使して農場を発展させるという、一部熱狂的ファンがいる「Farming Simulator」シリーズは、その一例だろう。これはこれで濃すぎて、ライトゲーマーには、何が面白いのか理解が難しいかもしれないが……。
それはともかく、今回紹介する「Thief Simulator」は、その名のとおり「シーフ」の役柄を堪能するゲームだ。
RPGでシーフと言えば、立派な職業。戦士や魔術師に比べると派手さはないが、罠を発見したり、宝物庫の錠を開けたりと地味に活躍する。しかし、本作でのシーフは、RPGのそれとは違う。現実世界の「シーフ」、すなわち泥棒・空き巣になって、物を盗みまくるというゲームだ。
いかにも馬鹿ゲー路線の臭いがプンプンするが、2018年11月にSteam(PCゲーム、PCソフトウェアなどを購入できるプラットフォーム)で発売されてすぐに世界的にヒット、12月に日本語版が出て日本のコアゲーマーにも注目されている。
Steamのレビューを見ると、約8割が好意的な賛辞を寄せており、「Goat Simulator」のように、「ご祝儀」気分で購入した人はあまりいなさそうだ。つまり、ゲームとしてしっかり評価されているわけだが、どんな内容だろうか。前置きが長くなってしまったが、本作での泥棒稼業の流れを、ちょいと見ていこう。
隠密に徹するのがミッション成功のカギ
オープニングは、ある民家のそばにいるところから始まる。時刻は23時。ゲームの中でのあなたの風貌は、スキンヘッドで無精ひげを生やした、いかつい白人男。全身黒っぽい出で立ちで、いかにも不審人物だ。
そこへ、ヴィニーという名の男からスマホに呼び出しが入る。彼は、まずそばに落ちているバールを拾えと言う。下を見てバールを拾うと、ヴィニーはあなたに保釈金を払ってくれた者への恩義として、目の前の家で盗みを働けと指示してくる。
なんと、あなたは未決の被告人で、保釈金の立て替えを精算するために、またも犯罪に手を染めなくてはならない立場に陥っている。とはいえ、その辺の苦悩はあっさりスルーして、バールで板塀を壊して、家の敷地に踏み込む。
ヴィニーのアドバイスに従い、家の者がたたずんでいる窓の下をかがんで歩き、照明に照らされた箇所を避けて進む。
試しに、照明の下をダッシュで走ったら、外でバーベキューか何かをしていた家主に見つかり、あっけなくゲームオーバー。
そう、あなたの役回りはあくまでも泥棒。家主をバールで昏倒させて、さるぐつわをかませるといった強盗を働くことはできない。いかにこっそりと立ち回るかが、このゲームの醍醐味の1つとなっている。
家人のいない部屋の窓をバールで割り、いよいよ潜入。金目になりそうなものは、なかなか見つからず、ティーポットなどの台所用品と現金15ドルをせしめて、外に出る。
外にはチープな自家用車が停まっており、これに乗ってアジトへと戻るようヴィニーが言ってくる。
不慣れな運転のため、交通標識にぶつけてしまうと、修理費がかかると表示が出た。
「いけない。このままではさっき盗んだ15ドルがパーになってしまう」と焦ったら、歩道に乗り上げ通行人を轢いてしまう。それでゲームオーバー(ただし直前のオートセーブからすぐに再開できる)。窃盗犯だが、それ以上の犯罪は許されないという、なかなか厳しい倫理観がそこにはある。
どうにか、アジトにたどり着くと、ミッションコンプリート。今回の「成績」が表示される。盗品の数・質とステルス性(いかにこっそり盗んだか)が経験値として加味され、今回の総合評価は「A」と、達成感をあおってくれる。
喜ぶ間もなく、「睡眠をとれ」とヴィニーから指示が飛んでくる。明日も別の家で泥棒ミッションがあるので、英気を養えというわけだ。
寝床の隣にパソコンが置いてあったので、寝る前に確認。ここからは、4つの闇サイトにアクセスできる。例えば、「ドロボウショップ」ではピッキングツールなど七つ道具が買え、「ブラックベイ」では特定の盗品を買い取ってくれる。
ヴィニーは、その中の1つ「パクリスパーク」を閲覧せよと言うのでアクセスすると、明日忍び込む予定の家の情報が掲載されていた。通常、家の情報を得るにはお金を支払う必要があるが、この家については無料。さっそく情報をゲット。そこは「空き家」で「値打ちのある古いテレビ」があり、「引き出しにドアの予備の鍵がある」という。これらをメモって、床につく。
闇サイトで目標の家の情報を取得し、よりスムーズな窃盗を心掛けるのがコツ