肝臓がん予防にアスピリンが有効か
高用量(325mg/日)のアスピリンを週に2回以上服用すると、肝臓がん(肝細胞がん)の発症リスクが低下する可能性があることが、米マサチューセッツ総合病院消化器病学のTracey Simon氏らによる新たな研究で示された。
アスピリン服用による肝臓がんリスクの低減効果は、服用量が多いほど、また服用期間が長いほど高いことも示唆されたという。詳細は「JAMA Oncology」2018年10月4日オンライン版に掲載された。
この研究は、米国で女性看護師を対象に実施されたNurses’ Health Studyに参加した4万5,864人と男性医療従事者を対象としたHealth Professionals Follow-up Studyに参加した8万7,507人のデータを分析したもの。
参加者を前向きに26年間追跡したデータを分析した結果、325mgのアスピリンを週に2回以上服用すると、服用しなかった場合に比べて肝臓がんリスクが49%有意に低下することが分かった(調整後ハザード比0.51、95%信頼区間0.34~0.77)。
また、アスピリン服用による肝臓がんの予防効果は、服用量と服用期間に依存することも明らかになった。
特に高用量のアスピリンを週に1.5錠以上、5年以上服用すると肝臓がんリスクは著明に低下していた(同0.41、0.21~0.77)。しかし、アスピリンの服用を中止すると、こうした肝臓がんリスクの低減効果は弱まり、服用を中止してから8年後には予防効果は消失した。
さらに、今回の研究では、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の常用による肝臓がんリスクの低減効果は認められなかった。
Simon氏らは、今回の結果はこれまでの研究で報告されていたデータを裏付けるものだとしながらも、因果関係は明らかになっていないとしている。
そのため、今後さらなる研究を重ねる必要があり、「アスピリンの常用は出血リスクの増大を伴うことから、今後は原発性肝臓がんのリスクが高い肝疾患患者を対象に、その服用による影響を検討する必要がある」と説明している。
Simon氏らによると、肝臓がんは比較的まれながんだが、米国ではこの40年間で患者数に増加がみられている。また、肝臓がんによる死亡率は、その他のがん種に比べて急増しているという。
共著者の一人で同病院の臨床・トランスレーショナル疫学部長であるAndrew Chan氏は「アスピリンの常用は、既に一部の成人では心疾患や大腸がんの予防を目的として推奨されている。
近年、さまざまながん種でアスピリンによる予防効果が報告されており、今回は新たに肝臓がんに関するデータが加わったものだ」と説明している。
また、同氏は、この研究結果は、多くの患者がアスピリンの服用について医師に相談する動機づけになるだろうと付け加えている。
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/fullarticle/2704212
構成/編集部