マスクを正しく使う
風邪予防のお供のマスクだが、正しく使っている人は「意外に少ない」と裴氏は指摘する。
まず、マスクのかけ方でNGだとするのが、鼻や顎を露出させること。これではウイルスは防げない。
そして、マスクを外すときは、(ウイルスの付着している)本体ではなく、横のひもの部分に指をかけて外すようにすべきだという。
使い捨てマスクを翌日も使うのもNGだ。マスクは使ったら、その日のうちに処分する。満員電車など感染リスクの高い所では、その場を離れたらマスクを新しいのに取り替えるくらいでないと、感染リスクは高いままだという。
「もったいないと思うかもしれませんが、風邪をひく損失を考えれば安いものです」と、裴氏は本書の中でマスクの使いっぱなしを戒める。
ちなみに、最近よく耳にするのが「マスクは風邪予防に効果なし」という言説。これは、国民生活センターの調査に基づいている。その調査によれば、「ウイルス99%カット」と表示のあるマスクも含めて、平均してフィルターの捕集効率は6割程度。顔との隙間から、ウイルスはいくらでも入ってくることが判明している。
ただし、調査は10年前のものであり、近年マスクの性能は向上している。特に米国労働安全衛生研究所のN95規格を満たした医療用マスクは、性能が非常に高く、一般の人でもネット通販で買える。ウイルス吸入を100%防ぐものではないが、着用すればその分、風邪のリスクは減る。
N95規格のマスクは、「絶対に風邪をひけない人にとっては魅力的」だと裴氏はすすめている。
うがいは効果があるが、うがい薬は不要
昔から風邪予防に励行されている「うがい」は、現代の医学の視点ではどうなのだろうか?
裴氏は「のどを保湿しウイルス感染を防ぐには、何よりもまず、うがいを習慣化することです」と明快だ。
本書で紹介されている実験によれば、1日最低3回の水道水によるうがいで、実験期間の60日間で風邪にかかった人は3割。一方、うがいをしなかった人たちは4割が風邪にかかったという。
一方で、「うがい薬に風邪の予防効果は望めない」とも。
これは、同じ実験で、ポピドンヨードの成分が入ったうがい薬でうがいした人たちの、4割近くが風邪にかかっている結果から。
ちなみに、うがいだけでなく、随時ドリンクをちびちび飲む、ガムを噛んで唾液を分泌させておくのも、喉の保湿になり効果的とのこと。
手洗いは効果があるが、ハンドドライヤーはNG
間接的な接触感染を防ぐ意味で、効果が高いのは手洗い。裴氏は、「1日11回の手洗いで風邪リスクは半減する」とアドバイスする。
ただし、「手洗いの前提として、爪は常に短く切っておきたいところです」と釘を刺す。爪の間は洗いにくいし、雑菌・ウイルスが溜まりやすいというのがその理由だ。
ところで、公衆トイレによくあるハンドドライヤーで殺菌機能のないものは「使ってはいけない」という。
その理由として裴氏は、「ペーパータオルに比べて2.7倍も多く、空気中にウイルスを飛散させた」という実証データを挙げる。
つまり、誰かがハンドドライヤーを使うたびにウイルスが宙に舞い、結果としてトイレ空間には「風邪ウイルスがトイレの空間中にまんべんなくばら撒かれている」可能性も指摘。使い捨てのペーパータオルが「圧倒的に清潔」と、こちらの使用をすすめている。