■連載/阿部純子のトレンド探検隊
若年層から高齢者までビタミンDの充足は必須
ビタミンD は脂溶性ビタミンのひとつで、食事からの摂取のほか、日光を浴びると体内で産生する、ビタミンの中では特殊な存在。ビタミンDは強い骨の形成と維持に必要なカルシウムとリンの体内吸収を促進する働きがあり、カルシウムを摂取したときにビタミンDがないと再吸収されにくいため、ビタミンDとカルシウムは合わせて摂ることが必要で、骨粗鬆症の予防や成長期の子供にも重要な栄養素だ。
ビタミンDの体内産生には日光浴が最適だが、近年紫外線対策が重要視される中で、過度な紫外線対策によって適切な日光浴の機会が少なくなる人も現れている。また秋から冬にかけては日照時間の減少に伴い、日光浴時間を増加させることが必要だ。不足分は食べ物から摂取することになるが、世界的に見ても日本人はビタミンDの摂取量が足りていない状況で、従来、日本人(男女共18才以上)のビタミンDの目安は1日5.5㎍だったが、最近のエビデンス等を検討し、より多くの摂取が必要であることも議論されている。
「ビタミン B1 欠乏による脚気、ビタミンD 欠乏によるクル病、骨軟化症のように、ビタミン欠乏によりさまざまな病気が起こる。近年、ビタミン欠乏症はおおむね克服されたと考えられ、健康維持におけるビタミンの役割が軽視されがちだが、軽度の不足であってもさまざまな病気のリスクが高まることが明らかになってきた。
クル病、骨軟化症を起こすほどではないビタミンD不足でも、骨折のリスクは増加する。さらにビタミンDは骨だけでなく、多くの臓器の健康維持にも欠かせないことも最近の研究でわかってきている。若年層から高齢者までビタミンDを充足させることは必須といえる」(神戸学院大学 栄養学部 田中清教授)
注目が高まるビタミンDの免疫機能への効果
最新の研究で、ビタミンDは免疫機能に効果があることがわかってきた。ビタミンDを日々適切に摂取することで、免疫機能の向上、各種神経疾患、心筋梗塞、高血圧などの心血管疾患、喘息、がん、結核などに対してポジティブに作用することが示唆されている。
中でも注目したいのが、ビタミンD摂取が風邪やインフルエンザ予防として有効であるということ。日本やアメリカの研究で、ビタミンD を十分に摂取することでインフルエンザ(A型)、急性上気道感染症(風邪)の発症リスクが低下したことが明らかになった。
ビタミンDから「ディフェンシン」というたんぱく質が作られて、気道の粘膜に作用して風邪やインフルエンザといった急性呼吸器感染症に対する保護作用ができ、発症リスクを低下させる。ビタミンDを十分に摂取することで免疫機能が向上して、感炎症の入口となる、のど、鼻をディエンシンの効果で保護できるという。