MVNOやWi-Fiスポットにも影響があった
房野氏:今回、MVNOも被害を受けましたね。
法林氏:もちろん。ソフトバンクのネットワークを使っていたら、基本的に全部アウト。
房野氏:こうしたトラブルがあった場合、補償は行われるんですか?
法林氏:MVNOとソフトバンクの間の取り決め次第ですね。
石野氏:ああいう不具合は免責みたいな感じの条項が入っている。ユーザーも基本的には請求できないですし。
法林氏:約款上では24時間だっけ。24時間以上、障害を放置していたら、お金の話をするといった内容がユーザー向けの約款に入っているけれど、普通はできない。
石野氏:そして案の定、日本通信が便乗プレスリリースを出した(笑)
房野氏:こういうときにオフロードできればいいけれど……
石野氏:まさにそういう内容でプレスリリースを出した。デュアルSIM化して、ソフトバンク回線に障害が起こった場合はドコモ回線を使えるようにします、みたいな。でもまぁ、MVNOがアピールできるタイミングでもある。複数回線を調達できるのはMVNOの強みなので、どこかで障害があったときは、デュアルSIM端末で切り替えて使ってくださいとアピールしていくのはいいのかなと。便乗ですけど、なんというか現実的な解でもある。MVNOならではのフェールセーフというか、バックアップ体制なので、そこはいいと思うんですけど、日本通信は実名を出して、あまりにも露骨だったので。
房野氏:今回、ライフラインにも影響がありましたか?
法林氏:国内のニュースで伝えられた限りでは、佐川急便が大変だったと。ソフトバンク回線を使っていたので、運転手さんと連絡がとれなかったり、決済端末が使えなくなったり。あと、こういうときのためにオフロードする場所をユーザーのために作る必要があって、町中のWi-Fiスポットを使うことになるんだけど、ソフトバンクWi-Fiスポットって、バックホールにソフトバンクのモバイル回線を使っているところが結構残っているんですよ。最低な状況。
石川氏:KDDIの広報さんがソフトバンクのWi-Fiスポットを紹介していたのが「神対応」っていわれていたけれど、いやいや、つながっていないからって(笑)
石野氏:とある媒体のPayPayの記事では、PayPayの広報さんが「ソフトバンクのWi-Fiスポットは、モバイル回線なのでつながらない可能性がありますのでご注意ください」と言ったということが書いてあって、なんで同じグループ会社が、そこまでコメントしているんだと(笑)
法林氏:モバイル回線を利用したソフトバンクのWi-Fiスポットって、結構、残っている。ドコモはNTTBP、NTTグループの光回線のバックボーンでWi-Fiスポットを展開しているので、ほとんど使えると思います。auは割とWiMAXが多くて、UQコミュニケージョンズの回線で設置している。光回線の場合もあるけど。ソフトバンクが一気にたくさんWi-Fiスポットを増やした理由は、モバイル回線を使ったから。これには理由があって、今は変わったけれど、ソフトバンクがiPhoneを扱い始めたばかりの頃、iPhoneは1.5GHz帯をサポートしていなかった。ソフトバンクが持っている1.5GHz帯の有効な使い道がないかという話になったとき、Wi-Fiスポットにすれば、iPhoneが対応していない周波数帯域でも、Wi-Fi経由で通信できるという。言い方は悪いけど、そういう付け焼き刃的な使い方をしていたツケが回ってきたという感じがする。そこがドコモやKDDIとの根本的な違い。サービス全体として見た場合、ちゃんとベースがあって設計していくスタイルと、足して、足して建て増ししていったスタイルとの違い。ソフトバンクは、ちょっと痛い感じ。