一年の締めくくりとして、大みそかの夜にいただく「年越しそば」。新年を迎える準備として、“細く長く”とかけて長寿のために食べるといった、さまざまな意味合いがある。地域によっても家庭によっても食べ方はさまざま。中でも沖縄県では独特の食べ方がある。いわゆる日本そばではなく、地元の郷土料理「沖縄そば」をいただくそうだ。
そこで今回は、沖縄県出身で那覇市在住のマナー講師である新田純子さんに、沖縄での年越しそばの風習を聞いてみた。
年越しそばとして「沖縄そば」は主流
沖縄の年越しそばは沖縄そばだという噂は本当か? 普通の日本そばを食べる家庭もあるのだろうか。新田さんは次のように話す。
「家庭によって異なります。今回、5人くらいの沖縄に住む方に『年越しそばは何を食べますか?』と尋ねてみたのですが、タクシーの運転手さんは『沖縄そばさ。』と即答。その他4人も沖縄そばを食べるとのことでした。沖縄では、年越しそばに沖縄そばを食べるのは当たり前の感覚です。近年は移住の方が増え、本土の文化が入ってきており、日本そばを食べる家庭もあります。例えば、お父さんだけ日本そばを食べて、他の家族は沖縄そばということもあるようですね」
沖縄では、年越しそばに沖縄そばを食べるのは当たり前のようだ。
ちなみに、沖縄で「そば」といえば、ほぼ「沖縄そば」を指すそうだ。
「沖縄の飲食店では、『そば』を頼むと普通は沖縄そばが出てきます。近年は日本そばが食べられるお店も増えてきましたが、日本そばを沖縄でいただきたい場合、地元の方に聞くときは『日本そばが食べられるお店はどこにありますか?』などと明確にお聞きしたほうが良いでしょう」
沖縄そばの食べ方
ところで、冬でもそれほど寒くない沖縄では、沖縄そばを冷たくして食べることはあるのだろうか?
「冷たくして食べるのは、ほとんど見たことがありません。やはり定番は温かくして食べます。沖縄そばをざるにしていただくのはこの20~30年の間に増えてきている、お土産用を中心として販売されているゴーヤー麺、紅芋麺、もずくなどを練りこんだ海藻麺など。これらは“ざる版沖縄そば”といえるでしょう」
また、沖縄そばを年越しそばとして食べるときも、おなじみのトッピングでいただくそうだ。
「かつては、年越し用の沖縄そばは、量り売りをしていることが多かったのですが、近年はスーパーなどで年越し沖縄そばを手軽に購入できるようになりました。生で買ってきて、油分を流すために、さっと湯通しします。最近は、スープは粉末や液体で売られていますが、手作りとなると少し時間と手間を要します。沖縄そばのスープをとるために、豚バラ肉のブロックを買ってきてだしを取り、取り出した豚肉を三枚肉として砂糖、醤油、みりん、泡盛で味付けし、沖縄そばのトッピングにします。
ソーキを手作りする場合にも、骨付きあばら肉を同じようにスープのだしに使い、三枚肉同様に味付けし、トッピングします。ネギ、紅ショウガを乗せて完成です」