1日約500本以上の列車が運転されている東海道・山陽新幹線。それらを統括・管理しているのが東京某所にある「新幹線総合指令所」だ。しかし、その指令所が万が一、大規模災害に遭ってしまったら東西を結ぶ大動脈がストップしてしまう。そんな事態を回避するため、実はもうひとつ、東京の指令所と同等の機能、設備を備えた指令室が新大阪付近に存在している。
きっかけは阪神淡路大震災、東海道・山陽新幹線における「もう一つの頭脳」
今回、私ムラカミが取材に訪れたの「東海道・山陽新幹線第2総合指令所」は、先に記したように東海道・山陽新幹線における「もう一つの頭脳」とも呼べる存在で、1995年に発生した阪神淡路大震災を受け、建設構想がスタート。1999年2月に完成し運用が開始された。
メインとなる東京の指令所のバックアップが主の第2指令所だが、普段は機能していないのかというとそうではない。常時電源は入っており、緊急時にはすぐに指令機能を移管できるように常にスタンバイしている。その切り替えに必要な所要時間は「だいたい1時間もあれば」とJR東海 輸送指令長 小村 勝夫さん。今回は年に一度、実際に東京の指令所から指令機能を第2指令所に移して運用する訓練の様子が報道陣に公開されたのでレポートする。
日本の一大ライフラインである東海道・山陽新幹線の指令所ということもあり、そのセキュリティーは最高クラス。詳細な場所は関係者以外に明かされていない。今回、特別に取材をさせてもらったが〝某所〟以外の表現は固く禁じられた。
今まで、様々な鉄道関連施設を取材してきたムラカミも東海道・山陽新幹線の指令所に入れたのは生まれて初めて! やや緊張して室内に入ると、そこには忙しく動き回る指令員たちの姿が。当日は特にダイヤ乱れなどは発生していなかったが、それでも各方面との調整等で指令員の業務は多忙を極めるようだ。
東京で指令が行なわれている際には、司令員、保守要員の訓練、また設備改良時の確認試験などが行なわれる。業務に当たるのは、JR東海、JR西日本、JR九州の職員たちだ。
もう少しこちらの施設について解説していこう。指令室の一番前にあるのは「総合表示盤」。東京から鹿児島中央まで全ての列車の運行情報をリアルタイムで表示している。鹿児島中央も? と思う人がいるかもしれないが、九州新幹線は山陽新幹線との直通運転も実施している関係から、JR東海、JR西日本の指令員に加え、JR九州の指令員も配置して、東海道・山陽・九州新幹線を一元的に管理しているのだ。
九州を走る列車を統括するのは難しいのでは? と当日、勤務に当たっていたJR九州 東京統括指令長 牧野 和也さんに尋ねると「現地の職員との密な連携やテレビ電話などのネット回線を用いてリアルタイムに情報のやりとりをしています。特段、不自由は感じないです」とのこと。なおこの日の各社の人数比はJR東海が102名、JR西日本が66名、管理業務が主のJR九州は4名で、通常の業務とほぼ変わらない人数とのこと。
立って歩いて座ってと指令員は大忙し。こちらはJR西日本の指令員。