非金持ち宅はゴミを一気に出す
非金持ち宅のゴミのもう1つの特徴は、「ゴミを一気に大量に出す」。例えば、15袋もの70リットル袋に炭酸飲料ペットボトルの詰まったゴミなどを見ることがあるという。また、アイドルとの握手券付きCDが大量にゴミ袋に入っているのも、非金持ち宅の特徴。
滝沢さんは、「これもまた自分にあてはめてみました。お笑いライブが終わって夜遅く帰ってきて、子供達が散らかした部屋を見ると、疲れているので片付けは明日でいいかと思うことがよくあります。気持ちに余裕や元気がないと、綺麗な部屋を維持することはなかなか難しい。僕と同じように、片付けは休みの日でいいやと思っている人達が、一気にゴミを片付けて大量にゴミを出すのでしょう。金持ちの地域の人達は清掃車が来る音で主婦達がわらわらと出てきて『このゴミもお願い』など言ってゴミを渡してきます。専業主婦というだけで、きっと働かなくてもいい経済状況なんだろうなと想像できます。ゴミは8時までですが、清掃車の音を聞き分けるのは、余裕がないとなかなか出来ませんね(笑)。部屋の状況イコール心の余裕と言えるかもしれません」
金持ち宅から大量に出るゴミで印象的なのは、使い古したテニスボール。あるいは、可燃ゴミとして捨てられた枝や木の葉だという。庭付きの広い土地に家を構え、近所のテニスコートに通うハイソな人たちの姿が想像できる。
金持ち宅の粗大ゴミの共通点
金持ち宅から出る粗大ゴミに多いのは「健康グッズ」だと、滝沢さんは指摘する。少し前は、ロデオボーイがよく捨てられていて、最近は(腹筋マシンの)ワンダーコアがよく出されるようになったという。
非金持ち宅からは、大きくてかさばる健康機器はあまり出てこないが、代わりにパチスロ台が粗大ゴミになっているのを見かけるそうだ。滝沢さんは、次のように語る。
「他には、非金持ち地域からゲーム機がよく出てきます。子供が遊んだというより、一人暮らし用のアパートなので、恐らく大人だと思われます。パチスロ台などもそうですが、非金持ち地域は、物に楽しませて貰う傾向があるかもしれません。物を使って時間を潰しているようにも見えます。一方、金持ち地域の人達の多くは物を使って自分を向上させようとしていると言えるかもしれません。ダイエット器具に飛びついて、すぐに飽きた主婦と言えるかもしれませんが、それでも今の自分よりなりたい自分の理想を掲げて何かしている様子が想像できます。きっとダイエットや健康器具は氷山の一角が見えているだけで、見えていない生活の部分も、自分に時間を投資しているのではないかと思います」
滝沢さんのプロのゴミ回収者としての観察眼には脱帽するが、それにしても金持ちとそうでない人の世帯のゴミに、これほどの違いがあるとは。こうした現象を滝沢さんは、前述のとおり「自己投資」の有無が違いになって現れていると見ている。つまり、金持ち宅は、自らの健康維持・増進に惜しみなくお金を使い、自分へのご褒美としてたまに高級ワインを飲む。そして、タバコやジャンクフードなどとは距離を置く。結果として、そうしたゴミは出てこない。非金持ち宅は、その真逆で特に自分の健康にはあまり関心を払わず、自分へのご褒美はコンビニに立ち寄るたび買う安価なドリンクやタバコが常。
逆に考えれば、もし自分の出しているゴミが非金持ち宅の特徴と合致していれば、そこを改めてゆくことで、金持ちへと近づいてゆくことができるともいえそうだ。ゴミには、生活レベル向上の意外なヒントが詰まっているのである。
滝沢秀一さん プロフィール
1976年、東京都生まれ。1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。「THE MANZAI」2012、14年認定漫才師。2012年、定収入を得るために、お笑い芸人の仕事を続けながらもゴミ収集会社に就職。ゴミ収集中の体験や気づきを発信したツイッターが人気を集め、話題を呼んでいる。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)