「若者のスナック菓子離れ」が言われて久しい。その影響もあってか、歴史あるスナック菓子の淘汰が始まっている。代表的なところでは、明治が2017年に東日本での『カール』の販売をやめており、森永製菓も『チョコフレーク』を2019年夏までに生産終了することを発表している。現在残っているスナック菓子も、決して安泰とはいえない。
このような中、湖池屋はこのほど、1987年発売の『スコーン』で初のフルリニューアルを実施し、2019年2月に発売することを発表した。パッケージデザインや味を大幅に刷新し、新キャラクター「ハラペコング」も新たに開発。大規模なプロモーションも実施する。
また、若者向けのブランドコンテンツ「私立スコーン学園」も2月に開校する。フルリニューアルされる『スコーン』の初お披露目となった11月29日は「私立スコーン学園」の入学説明でもあり、当日は「ハラペコング」の化身で学園の生徒である野性爆弾のくっきー氏も登場。生徒代表としてスピーチを行ない、会場を爆笑の渦に巻き込んだ。
好調なポテトチップスの裏で不振にあえぐそれ以外のスナック菓子
『スコーン』のフルリニューアルに少なからず影響を及ぼしているのが、ポテトチップスの好調である。じゃがいもの大不作により店頭から姿を消した2017年の「ポテチショック」から立ち直り、2018年のポテトチップスの市場規模は2016年のそれを上回るほどにまでに回復した。同社でも『カラムーチョ』のほか、プレミアムブランドの『KOIKEYA PRIDE POTATO』や『じゃがいも心地』が好調に推移している。
しかし、ポテトチップス以外のスナック菓子の元気のなさが目立つようになった。ポテチショック時は市場規模を拡大したものの、ポテトチッップスが持ち直すと再び低迷。2018年の市場規模は2016年のそれをも下回る結果になっている。
「『スコーン』をフルリニューアルする目的は、ポテトチップス以外のマーケットを元気にすることにある」
「私立スコーン学園」の理事長で、湖池屋の代表取締役会長である小池孝氏は、このように話す。
「私立スコーン学園」理事長、小池孝氏(湖池屋 代表取締役会長)
「青春のパワースナック」へと生まれ変わる『スコーン』
『スコーン』のフルリニューアルの詳細については、「私立スコーン学園」の学園長で、湖池屋の代表取締役社長である佐藤章氏が語った。
「私立スコーン学園」学園長で、佐藤章氏(湖池屋 代表取締役社長)
ポテトチップスは元気でもスナック菓子全体で見れば危機的状況な最大の理由が、若年層の購入が減っていることにある。しかも、最大のユーザー層である10代の購入が、他の世代と比較して大幅に減少している。湖池屋の調べでは、1年前と比べてスナック菓子の購入頻度が減った15〜19歳は全体の40%以上。20〜24歳、25〜29歳と比べるとはるかに高い。
しかも、ロングセラーブランドでは購買層の高齢化が進んでいる。『スコーン』の場合、2008年と2018年の購買層比率を比較すると、2008年は10代が18.6%であったのに対し、2018年は11.4%に減少。逆に30代以降は2008年が32.7%だったのに対し2018年は48.7%と拡大。ユーザーの高齢化が顕著に進んでいることがわかる。
ユーザーの高齢化が進んだ背景にあるものは、「ポテトチップスに対する興味が高まったことと若者スナック菓子離れ」と佐藤氏は断言。スナック菓子離れの原因はファストフードやコンビニのホットスナック、中食など、間食の選択肢が豊富になったこととし、「この現象は不可逆的なものではなく、メーカーの努力や提案で何とかしたいし、10代に振り向いてもらえる可能性はまだまだある」(佐藤氏)という思いから、同社は『スコーン』のフルリニューアルを決断する。
若者の支持を得るにはどうすればいいか? まず商品コンセプトをターゲットである10代を意識し、「青春のパワースナック」とすることにした。佐藤氏によれば、「青春のパワースナック」は言い換えると、若者にとってNo.1のスナック菓子を目指して真正面から取り組むこと。「『ポテチなんかぶっ飛ばせ』という気合いで『スコーン』をかっ飛ばし、売上を伸ばしていきたい」(佐藤氏)と意気込みに並々ならぬ熱意がこもっている。
「ポテチなんかぶっ飛ばせ」という熱量の高い言葉は、思いが空回りしているわけでも何でもなく、実現の可能性を秘めているからこそ出たものである。なぜなら、『スコーン』の味はポテトチップスに比べて濃く、若者向きだからだ。それに、現在は濃い味がブーム。この追い風に乗って売上を伸ばしたいというのが、同社の目指しているところである。