クリスマスは夫婦間でプレゼントを交換し合う派、プレゼント系は一切やらない派など、夫婦によってさまざまだろう。そんな中、今回はある一つの例を考えてみる。もし自分が夫の立場だとして、妻から「今年のクリスマスプレゼントは要らないから」と言われたらどうするだろうか。その言葉の真意はなかなか分かりにくいものだ。夫婦コミュニケーションに詳しい専門家に解釈や妻への対応法を手ほどきしてもらった。
妻が「クリスマスプレゼントは要らない」と言う意味は?
まず、妻からの「クリスマスプレゼントは要らない」という言葉には、どんな意味が込められているのか。夫婦・家族コミュニケーションの問題解決専門家である太田瑠美さんに解説してもらった。
「一つの解釈として、『本当は欲しいけれど、遠慮して言っている』と捉えることができます。そう捉えると、それなりのプレゼントを用意してサプライズであげると喜ぶと思うのですが、もし真意が異なる場合は、こちらの好意が仇になってしまう可能性もあります。
なぜなら妻は『本当に必要がない、買ってほしくない』と思って事前に申告しているのに、勝手にサプライズをされてしまうと、妻はまったく自分の気持ちに寄り添ってくれてないと感じますし、言ったことを理解してくれなかったと信頼を損なうことにもなるからです。こういった現象をミスコミュニケーションと言います。
例えば、『本当に欲しいものだけを周りに置きたいから、プレゼントされたら困る』という理由であれば、現金を渡す、物以外のプレゼントを渡すなどの選択肢が出てきます。
もし『ボーナスが減額された』『子どもの入学や受験で少しでも貯金しておきたい』等の金銭的な理由であれば、本当に欲しくないのか、どこまでなら買えるのか、低い値段のものならば不要なのか、をしっかり2人で話し合うことで問題は解消されます」
妻が本当にほしいプレゼントの聴き方のポイント
「クリスマスプレゼントは要らない」の解釈は、実に何通りもあることが分かった。では、夫はどうするのが一番いいのか。
「何も聞かずに当たり障りの無いものをプレゼントしたとしても逆効果しかありませんから、まずは『なぜ必要がないのか』、その気持ちに寄り添って聴いてみましょう。その際の聴き方のポイントを3つお話させていただきます」
1.一旦、相手の意見を受け止める
「『なんで要らないの?』『あげるって言ってるのに』など疑問がたくさん浮かぶと思いますが、いきなり質問を繰り返すと、相手からすると警察の取り調べのように責められているように感じてしまいます。ですので、まずは『そうか、今年のプレゼントは要らないんだね』と受け止めてあげてください」
2.相手が安心して意見を言えるように、謝罪して自己開示する
「1で、言い争いのルートを回避できました。しかし『なぜ必要だと思わないのか』を妻が安心して言える状態までは到達していません。相手に心を開いてもらう最速の方法は、自分の心を開くことです。そして、これは“黒心理”に近いのですが、先に謝ってしまうと人はなかなか怒りにくいものです。まず、少しだけでいいので本心を話しやすい空間を作るために、自分から心を開いてみましょう。例えば、金銭的な理由だと予想できる場合は『将来のことや金銭面で心配をかけて申し訳ないと思うよ。僕は日頃の君へのお礼としてクリスマスプレゼントを渡したいと思っているんだけど…』という声かけをすることで一気に話しやすい空間になるでしょう」
3.感情を拾いつつ、本質を捉えた質問をする
「これまでのステップで、もう『何でも話しても大丈夫』という空気感はできているはずです。ここからはいよいよ質問をしていきましょう。その際に注意するポイントをご紹介します」
(1)責めない・さえぎらない
●NG例
夫「なんでいらないの?もしかしてお金の心配してるの?」
妻「うん。だってね、来年、小学校に入るから何かと必要…」
夫「でも、その分はちゃんと貯金してあるって言ってたよね?」
「このように責めているかのように質問をして、相手が答えている間に話を遮ってさらに質問をするのはNG。しっかり相手の言いたいことを最後まで聞いてから次の質問をしないと相手のせっかく開いた心が閉じてしまいます」
(2)脱線した質問はしない
「何を話してもいい空間になると、脱線してダラダラ話を続けがちです。今回は、プレゼントが要るのか・要らないのか、どうすれば受け取るのか・本当に不必要なのかなどを話し合って適切なラインを決めるときですので、あまり他のことや過去のことを掘り下げてしまうと口論となり得る“新たな火種”が出てくる場合もありますので、基本は今回の要件に合った話題についてだけ、端的に質問をしましょう」