今年、日本と世界を代表するセダンのベストセラーモデルがモデルチェンジを果たした。最新のベストセラーモデルは、どんなコンセプトで進化を遂げたのだろうか。今回、トヨタとメルセデス・ベンツが投入する最新セダンのこだわりに注目し、乗り比べた。
トヨタ『クラウン』とメルセデス・ベンツ『Cクラス』。どちらも日本とドイツを代表する自動車メーカーのベストセラーモデルだ。前者は今年6月にフルモデルチェンジ、後者は7月に大幅改良を行なった。この2車のクルマ造りの方向性の違いについて考えてみた。トヨタ『クラウン』は日本市場だけを見据えて開発された数少ないセダンだ。歴代『クラウン』もすべて日本のユーザーのために造られてきたわけだが、その開発理念は熱く、今回も走行性能を向上させるためドイツのニュルブルクリンクで過酷なテストを重ねた。
最大のポイントは1.8mという車幅にある。最近の国産車はモデルチェンジのたびに大型化する傾向が見られるが『クラウン』は日本の道路や住宅、駐車場などの諸事情に配慮し1.8mにこだわり続けている。トランクスペースもゴルフバッグが4セット収納できるサイズにこだわり、トランクリッドの自動開閉も断念したという。自動開閉用のステーとモーターがスペースを取り、それによってトランクが狭くなるのを嫌ったのだ。そこまでトヨタがこだわった、すこぶる日本的なセダンなのである。
一方、メルセデス・ベンツ『Cクラス』は世界基準にこだわったセダン。現行モデルが登場した2015年以降、年間販売台数でセグメントNo.1を保持し続けている。同車の魅力のひとつが、その豊富な車種構成。今回は4ドアセダンを紹介したが、このほかにステーションワゴン、2ドアクーペ、カブリオレまで取り揃えている。
『クラウン』も一時期、2ドアハードトップやワゴンなどバリエーションを広げた時期があったが販売台数が減少し市場が低迷すると、即座にラインアップから落とした。『Cクラス』のクーペやカブリオレがそれほど売れているとは思えないが、それでも販売し続けているのはクルマを取り巻く文化においては必要だと考えているからにほかならない。また『Cクラス』にはパワーユニットひとつを見ても、1.5LガソリンターボからV8、4.0Lツインターボまで幅広く用意されている。ユーザーにとっても『Cクラス』の選択肢の広さは大きな魅力であるはずだ。
『クラウン』も2Lターボ、2.5Lと3.5Lエンジン+モーターが揃っているが、旧モデルオーナーから見ると、選び方がわかりづらい。個人的には2.5Lの4WDがベストな選択肢であると思うが……。