Smart Keyboardも打ち心地アップ、横幅には課題も
iPad Proに取り付けるだけで利用できるSmart Keyboardも、「Smart Keyboard Folio」に進化した。それに伴い、コネクターの位置が変更されているため、従来のSmart Keyboardを使いまわすことはできない。Smart Keyboard Folioは背面までしっかり覆う形状になっており、ケースとして見ると、より信頼性が増した。また、わずかながら、キーボードの打ち心地も上り、キーを押すとカチッとした反応が返ってくる。
Smart Keyboard Folioは、背面まで覆うようになり安心感がアップ
Face IDとの相性もよく、キーボードをたたくと、自動でロックが外れる。キーボード装着時のiPad Proは置いた状態で使うため、顔と本体の距離が一定に保たれやすい。そのため、iPhoneよりもFace IDの失敗がかなり少ない。少なくとも、Touch IDのときより、ロック解除から文字入力がまでのフローが自然で快適だ。
ただし、そうはいっても、キーピッチが広く、キーストロークが深い一般的なキーボードと比べると、慣れは必要になる。筆者は1世代前のSmart Keyboardから使っているため、あまり違和感なく、長文や速記的に取るメモもこのキーボードでこなしているが、あまり長い時間使っていると、疲れてしまうだろう。あくまで気軽に持ち運べる、短時間用のキーボードとして使うのが正解といえる。当然ながらBluetoothキーボードにも対応しているため、腰を据えて作業するときは、別のアクセサリーを使ってもいい。
パフォーマンスの高さは、今回のiPad Proでも健在だ。チップセットにはアップル独自の「A12X Bionic」が採用されており、マルチコアでCPUを駆動させたときの性能が特に高くなっている。名前はiPhone XS、XS Max、XRに搭載された「A12 Bionic」に近いが、「X」がついているだけで別物。GPUのパフォーマンスも非常に上がっている。
Geekbench 4でのマルチコアのスコアが大きく上がった「A12X Bionic」
結果として、先に挙げたようなiPad版Photoshopもスムーズに動くというわけだ。現時点で同アプリは配信されていないが、「Affinity Photo」という高機能な写真補正アプリも、スムーズに動いた。比較的処理に時間がかかるフィルタの適用も素早く、実用的に利用できる。ここまで高機能だと、PC版Photoshopのように、ザクっと何十枚もの写真をまとめてリサイズするときなどに便利なバッチ機能もつけてほしくなる。
処理能力が高い反面、ファイル管理が基本的にはアプリ単位で、PCのようにとりあえずデスクトップに置き、使うアプリは後から選ぶといったことがしづらい。こうした違いもあるため、単純なPCの置き換えには向かないだろう。マルチウィンドウにもまだまだ課題はある。ハードウェアスペックとしてはもはやPC並みといえるiPad Proだが、ソフトウェアにはもう少し自由度がほしいというのが、率直な感想だ。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★★
撮影性能 ★★★★
音楽性能 ★★★★
UI ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
バッテリーもち ★★★★
持ちやすさ ★★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。