■連載/石野純也のガチレビュー
2010年に登場したiPadは、タブレットの代名詞的な存在になった。特に高機能タブレットの中では独壇場といえる存在で、世界シェアも1位をキープしている。中低価格なAndroidに押されるiPhone以上に、アップルが得意とする端末といえるだろう。そのiPadが、歴代最大ともいえる進化を遂げた。2018年11月7日に発売された、2つのiPad Proがそれだ。
ラインナップは11インチと12.9インチの2機種。これまでiPadの象徴でもあったホームボタンを廃し、ディスプレイが本体いっぱいに広がるデザインが特徴だ。背面に向かって丸みを帯びていたデザインも一新。初代iPadを彷彿とさせる、直線的な形状になり、スタイリッシュさが増した格好だ。
iPhone XシリーズとUIをそろえ、Face IDに利用するTrueDepthカメラも搭載。iPad ProではおなじみのスタイラスペンとなるApple Pencilも第2世代にリニューアルされ、本体側面にマグネットで装着するだけで、簡単に充電できるようになった。筆者は、このiPad Proの11インチ版を発売日に購入。約1週間ほど、“実戦環境”で利用してきた。ここでは、そのレビューをお届けしたい。
ディスプレイサイズが拡大した一方で、アプリの対応には課題も
まずはデザインだが、ホームボタンがなくなったことで、よりディスプレイそのものを持っている印象が増した。確かにホームボタンがあると、押すだけでホーム画面に戻れるため、操作が分かりやすかった半面、映像を見ているときにどうしてもベゼルが視界に入ってくる。ノイズがないデザインで、スタイリッシュさが増した格好だ。
側面から背面にかけてのデザインも、従来のiPadから大きく変わった。直線を組み合わせた角ばった形状になり、見た目から優しさのような印象が薄くなった一方で、先進感が増している。簡単に言えば、今まで以上に「かっこいいiPadになった」ということだ。iPad Proは、クリエイターのニーズに応える端末であることを考えると、このデザインにリニューアルしたのは正解といえるだろう。
11インチ版のiPad Proは、昨年発売された10.5インチ版の直接的な後継機になる。ホームボタンを廃し、ベゼルをそぎ落としたぶん、ディスプレイサイズを拡大できたというわけだ。本稿では取り扱っていないが、逆に12.9インチ版のiPad Proは、ディスプレイサイズを据え置きにしつつ、本体サイズを縮小している。アップル自身も、これまでの12.9インチ版はさすがに大きすぎると考えていたのかもしれない。
ホームボタンがないぶん、ベゼルが細くなった。11インチ版は、その差分をディスプレイの拡大に使っている
わずか0.5インチだが、映像などは、やや迫力を増している。一方で、これはアプリ次第な側面もある。内蔵アプリは基本的にこのディスプレイに最適化されているが、サードパーティのアプリの中には、11インチ版iPad Proに対応していないものもある。もちろん、こうしたアプリも利用はできるが、この場合、画面上下に無駄な黒帯の余白が生まれてしまう。
Googleマップ(上)には純正のマップ(下)にはない黒帯が存在する
本稿執筆時点で発売からまだ1週間しか経っていないため、時間の問題で、今後対応が進んでいくと思われるが、更新頻度が低いアプリを使っている人は、注意が必要になりそうだ。とはいえ、黒帯の面積はそこまで広くないため、気にせず使うという手はある。実際、筆者も未対応アプリを多々使っているが、よくよく見比べないと違いが分かりづらいレベルだ。ただ、やはり不格好なことに違いはないため、アプリ開発者側の対応には期待したい。
ディスプレイ品質は高く、従来のiPad Proが対応していたTrueToneなどの機能も引き継がれている。光の反射を抑える加工が施されているため、蛍光灯の下でも見やすく、色も正確。120Hzで駆動する機能も健在で、ディスプレイに表示した映像が、指に吸い付くような感覚を覚える。