ATとMTだけじゃない!トランスミッションの種類と特徴
トランスミッションとは、エンジンなどの動力をトルクや回転数、回転方向を変えてタイヤなどに伝達させる変速機のこと。このトランスミッションだが、大きく分けるとAT(オートマチック)とMT(マニュアル)の2種類というのはご存知のとおり。
このほかにも、クラッチ操作のみを自動化したセミAT(セミオートマチック)とカテゴライズされるものもあるが、日本の道路交通法では、クラッチ操作が必要ないトランスミッションはAT(AT限定免許)に分類されるため、MT以外はATとして話を進めさせていただく。
現在、このトランスミッションは、さまざまな進化を遂げ、従来のMTやステップATをはじめCVT、DCT、AMTなど、実に多彩なバリエーションが存在する。今回は、その主な種類と特徴を解説しよう。
ちなみに、これだけトランスミッションのバリエーションがあると、その分類も複雑で、分かりづらいもの。そのため、ATの場合は、クラッチがなくブレーキとアクセルだけの「2ペダル」、MTは「3ペダル」、セミATを「2ペダルMT」と表現することも多いので、憶えておくと役立つだろう。
ステップAT(トルコンステップ オートマティック トランスミッション)
古くから一般的に採用されているのがこのステップATで、トルクコンバーターによって動力を伝達し、段階的に変速するシステム。もともとは、煩雑な変速操作を自動化するのが目的で、初期のころは動力の伝達ロスも多く、燃費面ではあまりよくなかった。
また、多段化すると変速機の構造が複雑化し、重量やコストもかさむため、3〜4速が主流だったこともあり変速のスムーズさに欠けていた。
最近では、技術的な進歩やコンピューターなどによる緻密な制御が可能になり、パワーロスによる燃費も改善。さらに多段化が進み、6〜8速タイプのクルマも多くなり、乗用車の中にはメルセデスベンツの9速やレクサスの10速というものまで登場している。
CVT(連続可変トランスミッション)
国産モデルを中心に採用が増えてきたのがこのCVTだが、ステップATのようにギアセットを切り替えるのではなく、基本的に向かい合った2つのプーリー(滑車)をベルトやチェーンでつなぎ、プーリーの幅を変えることで、無段階に変速比を連続可変する仕組み。
無段階に変速させることができるため、変速のショックもなく常に最適なギア比でスムーズに走行することができる。さらに、エンジンが低回転でも高負荷で運転することができるため燃費性能も高い。
一方、ステップATなどに比べ受容トルク低いため、大型車などには採用されにくく、軽自動車やコンパクトカーなどが中心となる。
DCT(デュアルクラッチ トランスミッション)
「デュアルクラッチ トランスミッション」という名のとおりクラッチが2つあり、基本的な仕組みは、MTと同じ。ただし、クラッチ操作は電子制御で自動で行なわれ、一方が奇数のギア(例:1-3-5速)を、もう片方が偶数ギア(例:2-4-6速)を担当し、それらを交互に切り換えながら変速する。
上記のように一方が稼働しているときに、もう片方がスタンバイ状態になっているため、瞬時の変速が可能。
さらに、MTと同様に変速時のダイレクト感が味わえるということで、フォルクスワーゲンが「DSG」という名称で搭載したのを皮切りに、ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニといったスポーツカーメーカーや日産GT-Rなど速さを追求するクルマが、こぞって採用するほど。難点は、構成部品が重複するためサイズが大きく重たくなること。