A:エンジン回転数を表示するメーターです
最近驚かされるのは、クルマからタコメーターが消えつつあることなんですよね……。昭和40年代男の筆者は頭も体もすでにかなり古いらしく、タコメーターなしのクルマなんて考えられないのですが、今や「タコメーターって何ソレ? タコ度を測るの?」という時代になりつつあるようです。
世の中から消えていくモノには、それなりの理由があります。タコメーターはエンジン回転数を表示するメーターですが、「エンジン回転数なんか見たってしょうがないから、タコメーターも要らないよ」ということでしょう。
実際のところ、タコメーターの存在理由は「エンジンコンディションを示すため」なのですが、エンジンの信頼性が上がった今、「別に見たってしょうがない」と思われても仕方ありません。また、タコメーターはMT車のシフトチェンジのタイミングを計るのに非常に有用なのですが、9割以上がAT車という現状では、これまた不要ということでしょう。
さて、バイクです。バイクはクルマに比べてスポーツ性が高く、一部ATもありますが、ほとんどがMTです。ですからシフトチェンジの際や、オーバーレブ(回しすぎ)を防ぐために、今も大いにタコメーターの利用価値があります。最近のモデルには、設定したエンジン回転数に達するとピカピカとインジケーターが光ってシフトアップのタイミングを知らせてくれるものもあります。
また、エンジンの信頼性はクルマ同様かなり高まっていますが、アイドリングが安定しているかどうか確認したり、吹け上がりの度合いをチェックするのに、まだまだ有効です。
……と言いつつ、実はバイクにもタコメーターがないモデルはたくさんあります。これはまさに「不要だから」。シンプルさを身上とするバイクの場合、ハナからタコメーターが省かれることもあるのです。耳でエンジン音を聞き、体で加速度合いを感じながら、最適なタイミングでシフトチェンジするのは、ライディングの醍醐味のひとつです。
なお、公道を走るバイクやクルマはタコメーターがなくても構わないものの、スピードメーターは絶対に必須です。レーシングマシンはその逆。タコメーターのみが装備されており、スピードメーターがありません。「どっちみちアクセル全開だから、スピードが何km/hか知ったところでしょうがない」と、切り捨てられています。
筆者は試乗などでスピードメーター付き公道バイクをサーキットで走らせることもありますが、確かにスピードを数字で見ると「ゲッ、こんなに速いのか!」とビビッてしまうだけ。いいことは特にありません。逆に、タコメーターはチラチラと見ます。特定のコーナーを何回転で走っているかを知ることは、ギア比のセッティングにも役立ちます。
ちなみに「タコメーター(tachometer)」は英語。ギリシャ語で速度を意味する「タコス」という言葉が語源とされています。軟体生物の蛸とは関係ありません。
文/高橋 剛