何気ない生活の中、夫は「妻の気持ちがわからない」「妻の機嫌が悪い気がするけどなんで?」と感じることはないだろうか。そんなとき、いくつか対処法を知っていれば、より生産的に事態を変えることができるはずだ。そこで子育て世代に向けたセミナーやトレーニングを提供している、一般社団法人パートナーアソシエイツ認定パートナーシップコーチである森田亜矢子さんに、夫が実践できる対処法を聞いてみた。
妻が何を考えているのかさっぱり…
「妻が何を考えているのかわからない」「なぜ機嫌が悪いの?」「なぜ怒ってるの?」と妻を理解できずに困っている夫に、森田さんは次のようにアドバイスする。
「多くのケースで、奥様の機嫌は突然悪くなったというわけではなく、積み重ねであることが多いのです。旦那さんは蓄積される『小さな不機嫌のサイン』を見逃してきてしまっているかもしれません。奥さんやご家庭に絶対の信頼があるときほど、奥さんへの対応は無意識にその質が下がってしまうことがあります。家に帰った後も、仕事のことで頭がいっぱいだと、奥さんの話が頭に入っていかなかったりして、なかなか小さな不機嫌のサインに気づくことはむずかしいもの。もし今、『なんだか奥さんの機嫌が悪い』と気づくことができているのなら、ぜひ奥さんとの関係性の立て直しを図りましょう」
妻の機嫌が悪いときに自問したい3つの問い
実際、妻の機嫌が悪い、口をきいてくれないというとき、夫はまず何をするべきだろうか。
「自分自身の行動を振り返り、夫婦の関係性の状況を整理するために、以下の3つの質問をご自身にしてみてください」
1.最後に妻の話を真剣に聞いたのはいつか?
2.今、妻が一番興味を持っているものが何かを知っているか?
3.妻自身の人生、家事・育児・仕事・趣味などをどんな形で応援してあげられているか?
「これらの質問に自信を持った回答ができない場合、夫婦の関係性は少し悪化しかけている可能性が高いです」
妻との関係を良好に戻すための3つのステップ
森田さんは、妻との関係を良好に戻すための行動として、3つのステップを挙げる。
●STEP1 プチ謝罪で自己開示する
「まず、第一声でかけるべき言葉は、最近のご自身の行動を振り返ってのプチ謝罪です」
「最近、俺の仕事が忙しくて、なかなかしっかり夫婦(家族)の時間が取れなかったね。家のことをまかせっきりでごめん。」
「こんな感じです。相手に自己開示を求めたい場合、先に自分自身を開示するのが鉄則です。自分の自己開示を先にすることで、奥様の本心を聴き出しやすい関係を作っていきます。
逆に、第一声の声がけで絶対やってはいけないのは、『なぜ機嫌が悪いの?』『なぜ怒ってるの?』といったストレートな質問。この質問は、『機嫌が悪い奥様の行動に問題を感じている』(=奥様が悪いと旦那様からの非難)に感じてしまうことがあり、不必要に奥様の反感を買うリスクがあります。また『蓄積による不機嫌』の場合、明確な原因があるわけではないので、氷山の一角だけを聞き出しても意味がありません。氷山全体を知るためにも、まずは奥様が自己開示しやすい関係性作りから始めましょう」
●STEP2 20分くらい妻に話をさせる
「旦那さんの自己開示の次にすべきことは、奥さんに20分くらい話をさせることです。『最近、どう?』と、奥さんが直近で興味を持っている話題を振ってみましょう。今困っていることでも良いですし、面白いと思って見ているテレビドラマの話でも良いです。奥さんが話したい話であれば、何の話でも大丈夫。人は、自分の話をしっかり聞いてくれる人のことを無意識に信頼しはじめます。重要なのは、『奥様に気持ちよく話をさせてあげること』。話の聞き方のポイントは、奥様の話に対してアドバイスや反論をしないことです。良かれと思ってするアドバイスでも、『自分の考えを否定された』と感じさせることがあるためです」
【話の聴き方のコツ】
「とはいえ、無言で話を聞き続けるのも、『ちゃんと私の話を聞いてるの?』と思わせてしまうので、『あなたの話をしっかり聞いていますよ』というメッセージを相づちで伝えていきましょう。相手にこのメッセージが伝わりやすい鉄板相づちは、『す・な・お』で覚えてください。『すごいね…。』『なるほど…。』『面白いなぁ…。』元気よく言うよりも、最後が『…』になるように言うと、心の声が漏れ聞こえているような感じがするので、より効果的です。また、相手の言ったことを『○○なんだね』とそのままオウム返しするのも有効です」
●STEP3 核心に迫る質問をする
「20分以上、奥さんに気持ちよく話をさせてあげることができれば、土壌はすっかり整いました。核心に迫る質問をしても大丈夫です。ただし、『何で機嫌が悪かったの?』『何で怒っていたの?』という言葉よりも、『最近少し浮かない顔をしていたように感じたけど、何か困ったことでもあったのかな』という聞き方のほうがベターです。『機嫌が悪い』『怒っている』という表現は相手のことを自分の価値観で評価をしているように感じさせてしまいますが、『最近浮かない顔をしていたように感じる』という表現は、相手を思いやり心配している雰囲気が伝わります。
この後、奥様の心に蓄積されているモヤモヤを引き出し解消することができれば、奥様の不機嫌のループは一旦解消されるでしょう」
妻の機嫌が気になる場合には、ぜひ実践してみよう。
【取材協力】
森田亜矢子さん
一般社団法人パートナーアソシエイツ認定パートナーシップコーチ。以前はリクルートにて長年マーケティングの仕事に従事していたが、出産を期にフリーランスへ転身。現在は、パートナーシップコーチ/子育てマーケター/マザーズティーチャーとして、子育て世代に向けたセミナーやトレーニングを提供している。
「まあどれ」:https://www.bettermadre.com/
取材・文/石原亜香利