コーヒーバッグは何秒浸すのがベスト?
粕谷氏が考案に関わったというコーヒーバッグをおいしく抽出する方法「DIP STYLE」は、「1.バッグの上からお湯を140ml注ぐ 2.そのまま90秒お湯に漬ける 3.振らずにカップから取り出して完成」という3ステップ。
この90秒という時間にはどんな意味があるのか。ネスレ日本飲料本部 レギュラーソリュブルコーヒービジネス部 部長である島川基氏は次のように話す。
「DIP STYLEで淹れるのは何分がベストなのか、コーヒーバックをお湯の中で振るべきなのか、試行錯誤しました。好みの差は出ますが、粕谷さんが秒単位で味の違いを分析してくださり、ベストは90秒という結論になりました」
これについて、粕谷氏は次のように述べる。
「もちろん90秒がベストではあるのですが、飲む人がカスタマイズできるのもDIP STYLEの特徴です。漬けておく時間を長くしてもいいし、お湯の中で振ってもいい。カスタマイズと誰でも手軽にできるという面を両立させつつ、自由度を残してあります」(粕谷氏)
ドリップバッグ式とコーヒーバッグの違い
ところで、おなじみのドリップバッグ式と比べ、コーヒーバッグで淹れたコーヒーにはどのような特徴があるのだろうか。
●まろやかで味に奥行きが出る
「ドリップバッグ式で淹れた場合、紙フィルターでコーヒー豆の油分や雑味などを取り除くので、スッキリとした味わいを楽しめます。一方、コーヒーバッグは油分などをそのまま抽出しますので、まろやかで味に奥行きが出ます。また冷めてからの質感が良くなるのが特徴です」(粕谷氏)
●場所を選ばず、移動先でも飲める
「ドリップバッグ式はケトルが必要になり、場所を限定します。その点、コーヒーバッグはより簡単に誰でも本格コーヒーを淹れることができますから、たとえば出張に行くビジネスマンなど、コーヒーバックを持っていけば出張先でおいしいコーヒーを楽しむことができます。いずれ、飛行機の機内で淹れるという人も出てくるのではないでしょうか」(粕谷氏)
コーヒーバッグは、お湯に浸す時間がポイント。好みの秒数を知っておき、お湯とマグカップさえあれば、いつでもおいしい本格コーヒーに近い味わいが楽しめそうだ。
【取材協力】
粕谷哲(かすや・てつ)氏
2015年2月 :Japan Aeropress Championship 2015 優勝
2015年10月:Japan Brewers Cup 2015 優勝
2016年6月 :World Brewers Cup 2016 優勝(アジア人初)
大学院でファイナンスを修め、IT業界の第一線で活躍していたが、2012年に「1型糖尿病」を患い、入院中自分で淹れたコーヒーが「ものすごく不味かった」ことがきっかけで、コーヒーを徹底的に研究し、28歳でコーヒー業界に飛び込み、バリスタへ。世界チャンピオンとなった今、アジアや日本各地でセミナーやワークショップを行い、精力的に次世代のバリスタ育成や一般消費者に向けてのコーヒーの魅力の発信に努めている。
ネスレ日本「ネスカフェ 香味焙煎」
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取材・文/石原亜香利