■感知し、判断している
例えば、長い直線の下り坂の先に大きく回り込むコーナーが控えているとする。ドライバーは、まずコーナーに入る前に直線の最後でしっかりとフットブレーキを踏み込んで減速を完了させなければならない。
フットブレーキによってスピードが減じられると同時に、PDKは4速に入っていたギアを1速飛ばして2速にまでシフトダウンして、エンジンブレーキも掛かる。もう電光石火の早業とスムーズさだ。変速に伴うショックは一切ない。
2速でコーナーを回り、再び加速を始め、アクセルペダルを踏み込んでいった時にはすでに3速、4速と素早く加速態勢に移っている。文字で再現するとここまで長くなるが、完璧なコーナリングが何のストレスなく完了する。
ほどなくして、今度は反対方向のコーナーが出現する。フットブレーキ→4速から2速へシフトダウン→コーナリングという流れは変わらない。しかし、切っていたハンドルを戻し、直進状態になったと同時に、アクセルペダルに右足を載せた瞬間、ギアが1速に落ちる。1速だから、その直後の加速が鋭いこと鋭いこと。
通常のマニュアルトランスミッションで、2速から1速にシフトダウンするのは難しい。エンジンをオーバーレブさせないために入らなくなっているクルマもあるし、強いエンジンブレーキが掛かるから、クルマの姿勢が乱れたりすることもあるので、ATでも1速まで落とすことはまずない。
あるコーナリングでは2速までしか落ちなかったのに、別のコーナリングでは1速まで落ちる。それは機械の作動が不確かなのではなくて、PDKが感知して判断しているのだ。速度、エンジン回転数、横方向と前後方向のG(重力加速度)、ハンドル角、ギアなど様々なパラメーターを感知して状況を判断し、瞬時に演算し、ドライバーが次に何を行おうとしているかを察知してシフトダウンしている。