◆医療現場での「ベルソムラ」の反応や印象は?
「ベルソムラ」は不眠症治療薬なので、服用するには医師の処方が必要だ。治療現場で「ベルソムラ」を処方している、「睡眠総合ケアクリニック代々木」の中村真樹院長にお話を伺った。
Q・従来の睡眠薬と「ベルソムラ」の違いは?
A・従来の睡眠薬は脳の興奮を抑えて眠りに導くものだが、ベルソムラは起きている状態を維持するスイッチを切って眠りに誘導していくもの。
今まであった睡眠薬は、眠りを誘発するものに似た成分で、興奮を抑えて眠気を戻すというもの。心身のリラックス効果もあるため、筋肉までリラックスしてしまうので、薬がしっかり効いていると力が抜けやすくなり、夜中や朝に目覚めた時にふらつきや転倒が起こりやすいといわれている。
効果が持続する時間によって睡眠薬はいろいろな種類があるが、長く効くものを飲むと朝起きたときに眠気が残ってしまうとか、不安感を和らげる作用もあるので、薬が抜けたときや止めたときに、反動で不安感が出たり、依存しやすいと言われていたのが、今までの睡眠薬だった。
従来の睡眠薬は年配の方だと薬を分解する力が落ちてきているので、成人向けに出した量でも効き過ぎる場合もある。ベルソムラに関しては、不安感を抑える作用や筋肉をリラックスさせる作用はないと言われており、筋肉の力が抜けることによるふらつきなどの症状は、治験レベルの話だが、基本的に出ていない。
Q・「ベルソムラ」はどのタイプの不眠症により効果があるか?
A・不眠の症状は入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠感欠如の4つだが、今までの経験でいうと、入眠困難よりは、中途覚醒、熟眠感欠如に効果がある印象がある。
使った患者さんの意見では、従来の睡眠薬は「寝させられた」という印象があり、飲んで10~20分経つと、もわっと意識が遠のくような感じで、起きていたくてもだんだん吸い込まれていくような眠りになるという。寝つきが悪い人はその方がいいという人もいる。
しかし、ベルソムラを飲んでいる患者さんから、起きていようと思えば起きていられるという意見があった。11時ぐらいに寝ようとベルソムラを服用してベッドに入った後、メールのチェックをしても、なんとなく眠くなってはいるが、メールのチェックが終わるまでは起きていることが可能で、メールチェックを終えてスマホを置いたしばらく後、いつのまにか寝ていたと。自然な寝つきに近い感覚のようだ。
起きていようという意志があれば、オレキシンは分泌される。ベルソムラは「オレキシン受容体拮抗薬」と言われている通り、オレキシンとベルソムラは拮抗して作用するので、相対的にオレキシンの量が勝っていれば“起きていよう”という信号は伝わる。“寝ていい”という状態になったときは、オレキシンの量がすっと減ってきて、今度はベルソムラの量が相対的に増すので、ベルソムラがオレキシン受容体にふたをして、眠りに導くという、まさに自然の眠りそのものという印象を持っている。
いったんベルソムラがオレキシン受容体に結合すると、起きている状態を抑制させる作用が続いているので、途中で目も覚めないし、安定して眠れているので熟睡感が出てくるのではないかと思う。患者さんの中でも、途中で目を覚ましていた人の方が、改善効果があると感じた。
寝つきが悪い方で、入眠は時間をかければ眠れるが、途中で起きてしまうと後が眠れなくてきついという患者さんがいた。その方にベルソムラを処方したところ、飲んだその日からではないが、飲み続けるうちに途中で目が覚めなくなったということだった。