■Performance
この音は往年のマランツを思わせるような、中低域に厚みがあって、ウォームでなめらかなボーカル、クセのない音色、フラットな特性で、低域のドライブ感がある。原音再生と言うよりは音楽性豊かなアンプだ。見た目はスリムだが、ドライブ能力が高く、試しにApogee『Duetta Signature』に接続してみると、低域がゆるくなることもなく音量を上げなければ破綻のない音を再生してくれた。Diana Krall『Quiet Nights/Where Or When』(96kHz/24bit)では、曲全体から漂うウォームな雰囲気、Diana Krallのボーカル、ピアノの伴奏、それらがバランス良く展開する。ボーカルはあくまでもなめらかで、ニュアンスも伝わる。この音色はなかなか得がたいものだ。
■研究結果
実際の音を聴くまでは、ちょっとお洒落な北欧デザインのプリメインアンプと思っていたのだが、このアンプはいい。特にハイレゾ音源よりアナログレコードの方が音がいいと思う人にオススメだ。ハイレゾ音源の粒立ちの良さ、クッキリとしすぎる感じ、それらの排除して、ハイレゾの持つ情報量の豊富さ、ニュアンス、音場感をしっかり聴かせてくれるのがHEGEL『H80S』なのだ。もし弱点があるとすればデジタルボリュームを使っての小音量再生である。今回は間に合わなかったが、もしかすると『H80S』の前に高音質なパッシブアッテネーターを挟めば、さらなる音質向上が狙えると思う。20万円以下の海外製プリメインアンプとして、ハイコスパで魅力的な製品である。
●『H80S』は音楽を気持ちよく聴かせる
●『H80S』の音はクセがない
●『H80S』のドライブ能力は高い
●『H80S』はデザインもいい
(文/ゴン川野)
オーディオ生活40年、SONY『スカイセンサー5500』で音に目覚め、長岡式スピーカーの自作に励む。高校時代に150Lのバスレフスピーカーを自作。その後、「FMレコパル」と「サウンドレコパル」で執筆後、本誌ライターに。バブル期の収入は全てオーディオに注ぎ込んだ。PC Audio Labもよろしく!