◎家族想い、自分想いのビデオカメラとは
しかし、そもそも座敷わらしとはいったい何者なのだろうか?
「精霊のような存在ですね。昔、この地方で不幸にも亡くなった子供の霊とも言われていますが、この宿に漂う気を見る限り嫌な感じはしません。むしろ家を守る神様のような存在でしょう」(星さん)
確かに、どこか懐かしい、おばあちゃんの家のような雰囲気がこの宿には感じられる。
部屋に入ると、座敷わらしの姿をとらえるべく作戦会議に入った。星さんに加えて、今回我々が持ち込んだ第2の助っ人が、パナソニックの「スマ@ホーム」だ。動作や熱や音などを検知し、映像を自動的に撮影することができる。本来は防犯や子供や高齢者の見守りなどに使うもの。カメラやセンサーは、DECTなる無線規格でワイヤレス接続され、セッティングが簡単であることも特徴だ。
まず、計2台のカメラと人感センサーを、男性スタッフが泊まる26番の部屋に設置したが、座敷わらしを見るために、ほかに何が必要なのだろうか。
「絶対に見てやろうとか、連れて帰ろうという思いがあると姿を見せません。座敷わらしは子供なので、楽しそうにしていると、『何をしているんだろう』と向こうから寄ってくるでしょう」(星さん)
我々は「スマ@ホーム」の設置を終え、名物の盛岡冷麺を食べ、部屋で雑談に興じることにした。楽しそうな雰囲気を全面に押し出したが、特にカメラのセンサーは反応しない。これで何の映像も撮れなかったら、編集長にどう言い訳しよう……。そんな不安を感じつつ、夜は更けていった。
宿に入り、場の「気」を読み取る星さん。「玄関から廊下の奥へと流れる気を感じます。台所のあたりには強い気が満ちています」
階段にもぬいぐるみが並べられている。「大人でも上るのが大変なくらい急な階段ですが、子供が駆け上がりたくなる感じがします」(星さん)
「座敷わらしは昔の子供なので、お手玉やおはじきといった昔からあるおもちゃ、もしくはお菓子を持ってくると喜んでもらえます」(星さん)
星さんのアドバイスで購入した駄菓子。おだんごなどは3つにするのが良いとされる。