■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ
ベントレー初のSUV『ベンテイガ』に南スペインで乗ってきた。その走りっぷりは「最もラグジュアリーで、最もハイパフォーマンスなSUV」とベントレー自身が謳うにふさわしく、圧倒的だった。『ベンテイガ』には豊富なオプションが用意されているが、その中にとても驚かされたものがあったので、ぜひ紹介したい。
それは、ブライトリング製のトゥールビヨン時計。これまでも、ベントレー各車にはブライトリング製の2針タイプのクォーツ時計がセンターコンソールの空気吹き出し口の間に置かれていたが、この時計も同じところに組み込まれる。時計好きな人にはよく知られているトゥールビヨンとは、機械式腕時計の姿勢の違いによって起こる誤差を修正するメカニズムのことで、非常に複雑な構造のために高価な時計にしか採用されない。
最近では安価なものも登場したらしいけれども、ハイブランドのトップモデルに採用され、とびきり高価な値札が下げられると決まっている。わざわざ機械式でそんな手の込んだことを行なわなくても、精度と価格のバランスという点から考えればクォーツ式にはかなわない。あくまでも、クォーツ式が存在しなかった大昔に編み出された技術の伝承に大枚を支払っているようなもので、これはもう芸術や工芸のパトロンであるとも解釈することができるだろう。