――未来プロジェクト室が関わっているという『i-ROAD』に関しても、お聞きしたいのですが、そもそもどういった意図で開発されたのですか?
「2010年に発案したもので、低炭素、しかも快適なスマートモビリティ社会の実現に向けた、都市内近距離移動の手段にふさわしい超小型電気自動車、というのがコンセプトです。都市の移動をテーマに、自分が行きたい場所へ、行きたい方法で、移動はもっとカスタマイズ & パーソナライズできるというところから開発してきました。従来の自動車文脈とはだいぶ違う形で考えてきたんです。
クルマができてから都市ができた。都市ができてからクルマができていたら今とはだいぶ違っていたのではないかという話を『i-ROAD』を担当したエンジニアの谷中とよくしています。都市でクルマを見ていても一人や二人しか乗っていないことが非常に多い。本当に今のクルマという形が都市に適しているのでしょうか。そんなところから、未来プロジェクト室で『OPENROAD PROJECT』がスタートしました」(志村さん)
――我々は残念ながらまだ乗ったことがないのですが、実際にはどんな特徴があるのでしょうか?
「『i-ROAD』は街の中で乗るときにこそ、その真価を発揮します。横幅が10cmコンパクトになるということはスペック上は大したことには思えませんが、実際に街中で乗ってみるとその10cmが都市の移動を大きく変えるものだと実感できると思います。入り組んだ路地に入っていったり、駐車できる場所だったり、ここまで変わるのかと。まだ実車の台数が10台くらいしかないので、乗ったことがある人はまだ延べ40~50人くらいですが、もっと多くの人の声やフィードバックをもらいたいと思っています。現在、渋谷区内で実証実験をスタートさせたところです」(志村さん)
渋谷区の実証実験では2人乗り『i-ROAD』を約1か月間貸し出し、通勤、買い物、子供の送迎といったシーンでモビリティとしての利用価値を検証する予定だ。
――今後、『OPENROAD PROJECT』は、どう進んでいくのでしょうか?
「『i-ROAD』は都市型パーソナルモビリティとして、街の中でより自由に、快適に移動することを目指し、サービスとプロダクトを一体に商品開発を進めていく必要があると感じています。先ほども言った通り自動車メーカーは“プロダクト”だけをつくっていては、この先どうなるかわからないという危機感もあります。都市部の移動というのは世界のどこの都市でも共通の課題だと思います。我々なりの未来の都市の移動を考え、『OPENROAD PROJECT』を推進してまいりたいと思います」(諸田さん)
どんなメーカーでも、まったく新しい商品の「コンセプト」を作るのは、とても難しいことである。だが、クルマの場合、社会、インフラ、環境、人々の暮らし、産業、周辺ビジネスなど、この数年でみても関連分野が急速に広がっており、様々な可能性が期待されている。地球規模で自動車産業の発展、進化を考えた時、「コンセプト」が明確で、ブレないものでないと、次のステージに進むことは難しい。50年後、100年後に、この「未来プロジェクト室」から生まれた「コンセプト」がいくつ、現実のプロダクトやサービスとなって、人々の暮らしを支える存在として活躍しているのか、今からとても楽しみだ。
※後編に続く。
■関連情報
http://openroad-project.com/
https://www.toyota.co.jp/jpn/tech/personal_mobility/i-road/
取材・文・撮影/編集部