――「新しいモノを創造する」といっても、なかなか漠然としていて、難しそうですが、ここで働いているメンバーはどんな方たちでしょうか?
「今メンバーが11名で、その中にはもちろんトヨタの社員が多いですが、他社から出向で来てくれている人も何名かいます。志村さんも諸田さんも別の会社から出向で来ていただいています。私自身も女性ですが、この部署ではダイバーシティ(多様性)を大事にしています。ちょっと変わった人を選んだり、性格がかぶらないようにしています」(大塚さん)
未来プロジェクト室のメンバー、主任の志村和弘さん(写真左)と主任の諸田聖子さん(写真右)。異業種からも積極的に人材を登用しているという。
――社内でも「ここで働きたい」と手を挙げる人はたくさんいるのでは?多様化を大切にしているとのことでしたが、部署が新設された理由として、やはり「高齢化」や「人口の減少」、「若者のクルマ離れ」など現状への危機感みたいなものもはあったのでしょうか?
「そうですね、危機感や閉塞感みたいなものはありました。商品企画のやり方を変えないと、クルマというところから離れた、新しい軸を見つけられないですから」(大塚さん)
――具体的には新しい提案やコンセプトを作るのにどういうスケジュール、スパンで、個人がどれくらいの裁量をもってやっているのか可能な限り教えてもらえますか?
「だいたい1年から1年半くらいのスパンで1回はマネジメントまで含めて判断し、そのまま次につなげるか、ダメかの判断をしていますが、カチッとスケジュールが決まっているわけです。その都度、各自でテーマを決めて、一人が2~3つのプロジェクトを担当しています。一人で深く考えることも大事ですが、多様な価値観から意見を重視しているのでチームでの活動をすることが多いですね。
未来プロジェクト室の者はみんな企画職なので、技術的な部分では本社のエンジニアやデザイナーに入ってもらって、チームを組んで提案を詰めていくこともあります。毎年その中から会社に最終提案するものは5~6つくらいでしょうか」(大塚さん)
――提案といっても、どれも「実用化」を前提とした企画なのでしょうか?
「そうですね。すべて実用化を前提としていて完全にコンセプトモデルというものはありませんが、我々の提案を先鋭化してコンセプトモデルにしてモーターショーに出展するということはやっています。2012年からなので、まだ実用化したものは少ないのですが、過去に関わったものとしてはレクサスの『NX』とか、『CT』もそうですね。それからタクシー用にワゴンタイプの新型車を2017年度に売り出すと発表しましたが、あれも次世代のタクシーはこうあるべきだという我々の提案がベースです」(大塚さん)
未来プロジェクト室の入口に設けられた未来年表。30年くらい先まで未来の社会や暮らし、ニーズを想像し、そこからどのようなモビリティが必要になるか発想するために設置された「未来年表」。
社内にはカフェテリアや和室などもあり、まさにIT企業のような印象。