あのトヨタ自動車に「未来」という名前が付く部署があるのをご存じだろうか? それも東京・渋谷区のど真ん中に。だが、同社の燃料電池車『ミライ』を造る部署ではない。正真正銘、「未来プロジェクト室」というのが正式名称だ。@DIME編集部では、謎のベールに包まれた、この部署への取材を申し込んだところ、あっさりOKが出たので、早速、足を運んでみた。
今回、取材に対応してくれたのは、トヨタ自動車株式会社 商品・事業企画部 未来プロジェクト室長 の大塚友美さんと、同室のメンバーである、志村和弘さんと諸田聖子さんの3名だ。初めて訪れた取材班をやさしい笑顔で迎え入れてくれた。
――この「未来プロジェクト室」という部署に関して今まであまり聞いたことがなかったのですが、まず、どういう経緯で立ち上がったのか教えてください。
「そうですね。新コンセプトを専門に扱う組織、人が必要だということから1993年にこの組織の原型ができました。その名のとおり、既存製品にこだわらず、未来を見据えた新しいプロジェクトの立ち上げを行うための組織です。若者が多く、トレンド情報が収集しやすい場所ということで、2007年に原宿に移り、2012年に「未来プロジェクト室」になりました。ちょうどこの組織でできた93年ごろから、自動車産業がどんどん変わってきていたんです。そのころはまだセダンに乗っている人が多かったですが、価値観の多様化が進んできている実感はありました。そこでクルマのハードの部分、新しい体験、サービスなどをトータルに見ながら違う視点、新しい発想でクルマ作りを考え直し、領域を広げていく必要がある。5年先、10年先のトレンド把握だけでなく、20年先、30年先も見据えて、さまざまなことに対処しておこうと考えたのです」(大塚さん)
商品・事業企画部未来プロジェクト室長 大塚友美さん。1992年トヨタ自動車株式会社入社。国内向け商品の企画、人事を経て、海外向け車両の価格・収益マネジメントなど、幅広い分野を経験。商品・事業企画部 未来プロジェクト室にて10年、20年先をターゲットとした未来のクルマのコンセプト企画を担当。
――商品企画部との明確な違いはなんですか?
「トヨタの場合は商品・事業企画部というのがあって、我々も同じ部に属しています。トヨタの自動車のラインアップとか新しい車種を経営企画に基づき企画していくのがいわゆる本社にある商品企画ですが、我々の場合はトヨタ車のラインアップとは別に、とにかく新しいものを考えていきます。ラインアップ以前の問題として、だいたい10年から20年くらいのスパンで考え、今のトヨタにない新しいモノを創造していくのが我々の仕事です」(大塚さん)